第27話 魔銃
戦利品を馬車の屋根に積み込んでいたジムとトマスが戻ってきて輪に加わる。
ジムは、ヌアザと言う町の出で、軍を辞め里帰りの途中らしい。
因みにヌアザは、トマスの店の有るヌーグの一つ手前の町で、距離も近くジムとトマスは以前から顔見知りと言う話だ。
「旦那、取り分の百ドルだ」
ジムから十ドル金貨十枚を渡される。
「ともかく、旦那には感謝だな。お陰で命拾いもしたし、チョットした小遣い稼ぎも出来た。それに、甥っ子たちにも良い土産話が出来そうだ」
フッ、命拾いか……あれ程の腕だ。
例え相手が十人と言えど、この男が命を落としていたとは思えんな。
「時にジム、一つ気に成っていた物がある。良かったらお前さんの銃を見せて貰えんか?」
「ん、俺の銃かい。良いぜ、さっき旦那の銃を撃たせて貰ったからな」
ジムから受け取った銃に目をやる。
コルト・シングル・アクション・アーミー・キャバルリー、使用する弾丸は45ロングコルト、騎兵用に作られた銃だ。
一見只の銃だが……やはりな。
銃身に装飾された模様は只の飾りでは無い。
これは魔法陣だ。
微かだが、この銃から感じる魔力が気に成っていたのだ。
「さすが旦那だ。これが魔銃だって気付いたみたいだな」
「魔銃?」
「あれ?気付いた様に見えたが」
「いや、ワシは魔銃とやらを知らん。教えて貰えるか?」
「へ~、ま、良いぜ」
ジムはいぶかしんでる様だが、事実だから仕方あるまい。
「今、ソイツに詰めて有るのは普通の45ロングコルトだが、ソイツはこう言う弾も撃てるんだ」
そう言って、がんベルトから一発弾を出してきた。
弾頭の先が赤い……これは、魔力結晶!
米粒程の大きさだが、間違い無い。
「コイツは魔弾。この弾をその銃で撃てば、この弾に込められている魔法を放てるんだ」
ほう、確かによく見れば、弾頭と薬莢の方にも精密で
面白い!
この様な、魔道具見た事も無い。
確かに、ワシの十四年式の弾は、魔力結晶から錬成した物。
その込められた魔力で大きなダメージを与えることが出来るが。
あれは、単なる力業に過ぎん。
さほど効率の良い物でも無い。
「で、どの様な魔法を放てる」
「その銃ははキャバルリー・ファイヤー・キャスターってんだ。つまり炎の魔法を放つ専用の銃さ。炎の魔法が込められた、同口径の弾丸なら何でも撃てる……が、生憎今ある魔弾は
デカい熊か……そう言えばそんなのとやり合った事が有る。
もし、あの熊を仕留められるとすると、中々のモノだな。
「うむ、興味深い。ワシも一丁欲しくなった。トマスの店では扱って居らんのか?ガラクタでも構わんのだが」
どうせ、研究の為にばらすのだからな。
「ハハハ、さすがに魔銃と成ると、なかなか出物が有りませんな。大抵この様なモノは軍から支給されるか、専門のガンスミスに大枚をはたいて特注するかですからな。まあ、
何やら、言い辛そうにしているトマスに代わってジムが続ける。
「コイツには相性が有ってね。誰でも撃てるってもんじゃ無いのさ。色付きの魔力結晶を体の中に持っている者だけが、同じ色の性質の魔銃を撃てるのさ。もちろん、普通の弾丸なら、相性に関係なく引き金を引けるがね。旦那は自分の魔力結晶の色は何色か分かっているのかい」
「いや、分らん」
というより、恐らくワシの腹の中に有るのは魔力結晶では無く、精霊結晶なのだが……はてさて、どうなるのやら。
「まあ、どのみち、盗賊共の魔力結晶を出しに行くんだ、その時にでも、役所で相性を調べて貰うと良いぜ」
「わかった、そうしよう」
「ところで話は変わるが、トマスは何でそんな大金持ち歩いてたんだ?」
確かにな、旅の途中でまさかスペンサー銃を十挺も仕入れる事に成るとは、思ってもみなかったろう。
「ハハハ、勿論、商いの為ですよ。コイツを大量に仕入れる契約の代金の、お釣りと言いますか……まあ、上手く値切れたと言う事ですな」
そう言いながらトマスが出してきたのは、只のランタン。
「まあ、コイツは見本でして、石油ランタンと言う物ですよ。荷は後日届くことに成って居ましてね。今度
「石油……なんだそりゃ?魔力結晶で灯すんじゃ無いのか?」
「ええ、燃料は石油と言う物なんですよ」
うん、どういう事だ!?
ジムは石油を知らんと言うのか……トマスも初めて扱う商品の様に……。
一体、どうなっておるのだ?
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