第120話 撃ち抜く、一点

女王クイーンが投げつける岩やらゴブリンやらを避けつつ、軍刀で切りつけながら、左手に刀印を結んで魔法陣をえがき、それを胸に押し付ける。


そして、すかさず、軍刀を左手に持ち替え、咥えていた十四年式を右手に取り、一瞬で狙いを定め引き金を引く。

ズドン、ズドン!


キキシャァーーーー!

女王クイーンが、苦痛にかなぎり声を上げる。


「チッ、一発外したか!」

まだだ、未だ足りん!

だが、十四年式の弾倉は空。


襲い来るゴブリン五匹の首を切り飛ばすと、素早く軍刀を地面に突き立て、予備の弾倉を取り出して差し替えコッキング。

その隙を突いて襲い来るゴブリンをかわしざま、延髄に蹴りを叩き込む。


地に突き立てた軍刀を再び左手で引き抜き、更に三匹切り殺す。


一瞬、ワシに群がるゴブリンが途切れる。

「今だ!」

十四年式を構え狙いを定める。


もう外す事は無い。

ワシがさっきえがいたのはザミエルの魔法陣。

振るう権能は、魔弾の権能。

二発撃って、既に一発外しておる。

この後の五発は確実に、ワシの狙い通りに命中する。


ワシが狙う一点とは、最初に弾丸を撃ち込んだ、あの胸の傷。

ズドン、ズドン、ズドン!


キ、キキシャァァァァーーーーー!


立て続けに放った三発目の弾丸が、女王クイーンの背中に抜け、噴水の様な血しぶきが上がる。

そして、女王クイーンは断末魔の奇声を上げ、蜘蛛の様な足を折りたたむ様にして動かなくなる。


「ふぅー、先ずは女王クイーンを一体。で、ジムの方は?」

女王クイーンたおされても尚、襲い来るゴブリン共を軍刀で切り殺しながら、ジムの向かった東へと向かう。


ズドーン!


オーウェン達が応戦する銃声に交じって、遠くで聞き覚えのある銃声。


見えて来た。

前方に見えて来る女王クイーンの巨体が、炎に照らされている。

しかも、力無くうずくまる様に……どうやらジムが始末したらしい。

で、そのジムは?


ズドーン!


銃声が聞こえた南東に目を向ける。

ダスターコートを翻し走るあの影はジム。


奴は女王クイーンを始末しても尚、大砲をぶっ放しながら、町から遠ざかる様に疾走する。

当然、ジムが逃げる事など無い。

何者か、ジムが手をこまねくほどの強敵を、町から遠ざけ様と、引きつけておるのだ。


それ程の敵……ジムが放った射線の先に見えるあの黒い影。


炎の罠から距離がある。

暗く、良くは見えんが、あのシルエットは女王クイーンにも見える……。

「が、デカいな」


恐らく、女王クイーンより二回りはデカい。

「と、すれば、成るほどアレが女帝エンプレス

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