第119話 暴虐の女王

キ、キキャァーーーー!


ワシの放った銃弾をその胸に受け、女王クイーンが甲高い咆哮を上げる。

だが、やはりこの大の刻印の弾丸をもってしても、一撃で致命傷を与えるに至らんか……。


そして、猛り狂った女王クイーンが、その巨大な手で、ワシよりも大きな岩を掴んで投げて来る。

当たれば間違いなく致命傷だろうが、避けるのは容易たやすい、差して驚異を覚える攻撃では無い……それが一つだけならな。


両手で、手あたり次第に投げて来る。

しかも、それだけでは無い。

あの、蜘蛛の様な足の先端にも、やや小さいが、器用な手の様な物が付いておる。

その足も使って次々に石を……ん!?


炎をまとった何かが無数にワシの傍に降り注ぐ。

「なんと!?ゴブリンだと!」


恐らく、我が子で有ろう、火が付き、のた打ち回るゴブリンも引っ掴み、岩と共にワシに向かって投擲してくる。

うむ、ジムやオーウェンがヤツ等の事を、知性も感情も無いと称しておったが、正にだな。


頭上からは降り注ぐ岩とゴブリン、そして、地上からも襲い掛かるゴブリンの群れ。

それらをかわしつつ、女王クイーンに向け引き金を引く。

ズドン、ズドン!


キキシャァーーーー!


一発は、女王クイーンの腹に、もう一発はヤツの蜘蛛の様な足の一本を吹き飛ばす。


ワシが放つ銃弾は効いてはおる様だが、貫けんか……。

「うむ、埒が明かんな」


女王クイーンが更にゴブリン共を、次々に投げ飛ばしてくる。

その内の何割かは、地面と衝突し、打ちどころ悪く、そのまま立ち上がる事も無い。

だが、何割かは、ワシの近くに上手く着地し、飛び掛かって来る。


咄嗟に銃を口に咥え、軍刀を抜き放ち、一閃して切り伏せる。


ゴブリン共を切り捨てるのは容易だが、しかし、死を恐れずワシに群がるゴブリン共のせいで、女王クイーンを狙う暇がない。

仮にその隙が有ったとて、あの巨体、どうやって致命傷を与えたモノか……。


大技を放てば、あれ程の敵と言えど造作も無い。

それに、此処ここは町の外だ。

放つ方向さえ間違えなければ、町にも被害を及ぼさん。

だが……観客が多すぎる。

さすがに、女王クイーン程の巨体を吹き飛ばす魔法を放てば、言い訳のしようも無い。


群がるゴブリン共を切り伏せながら、女王クイーンに目をやる。

銃弾を撃ち込んだ、胸と腹の傷が見に入る。


ドクドクと血が噴き出しておる。

死に至らしめるには及んでおらんが、軽傷と言う分けでも無い。

今一つ、威力が有れば……。


フッ、良い手を思い付いた。

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