第166話 【ジム、潜入】 駆け引き

「ハハハ、本気でホバートの野郎が戻って来るとか、思ってんのか?」

「ど、どう云う事ですか?」


「聞こえ無えのか、この銃撃音を?」

「き、聞こえますよ。誰かは知りませんが、じきにアナタの仲間は始末されますよ」

旦那とホバート達がやり合う銃声だ。


「フッ、良く聞けよ。まだ、気付か無えのか、銃声の数が減ってる事に……ん、その銃声も止まったぜ」

「ま、まさか……」

ホバートに何人の手下を付けたか知ら無えが、三千人の精鋭を壊滅させたリンドブルムを始末した旦那だぜ、勝てる分けが無え。

そもそも、コイツに三千人なんて手下も居ねえだろうがな。


「そう言うこった。諦めてさっさと、バーニーを返しな」


「オ、オヤジ……ど、どうするんで?」

おいおい、お父さんじゃ無かったのかい。


「ハ、ハッタリですよ!炎龍さん、アナタこそさっさと、銃を捨てて出てきなさいよ。さもないと……」

「さもないと、バーニーを撃つってのかい?そうしたら、オレは遠慮無くテメエの脳天、ぶち抜くぜ」


「さ、さもないと……ヘッヘヘ、そうだ♪先ずは、甥御さんの耳を吹き飛ばすとしましょう♪それで、その次は目だ。で、その次は……どこにしますか、炎龍さん?」


チッ、野郎!


「ハァー、しゃぁ無え……」

やっぱ、楽には行きそうに無えか……。

「分かった降参だ」


「ハハハ、そうですよ、大人しく言う事聞けば良いんですよ。なに、甥御さんの事は心配要りませんよ。責任を持って送り届けて差し上げますからね」

フッ、ソイツは、あの世にって事か。


「オラッ!とっとと銃を捨てて出て来な!」

息子の方が威勢よく怒鳴る。


こう成りゃ、やるしか無えか……あまりもたもたしてても、そろそろ、下に残ってる連中もさっきの銃声で、上がってくるころだ。

バーニーには、これ以上怖い思いはさせたく無いんだがな……。

先ずは、担いでいたウィンチェスターをソファー越しに、放り投げる。

で、コルトの撃鉄を降ろして、それも放り投げる。


「良いですね、炎龍が顔を出したら、ハチの巣ですよ」

小男が、そう囁く。

チッ、こっちにも聞こえてるっつうの!

さて、アイツ等が想像以上のボンクラ揃じゃ無え事を祈るぜ……。


ポケットから在る物一つ取り出し、ヤツ等に見えない様に左手の人差し指と中指の間に挟むと、そのまま、両手を肩の高さに上げて、ソファーの後ろから立ち上がる。

それも、ゆっくりと……だが、殺気を込めてヤツ等を睨みつけながら……。

そして、ヤツ等の真正面に立つ。


フゥ~、助かったぜ、想定外のボンクラは居無え見てえだ。

この位置だ、奴等が全員見渡せるここに立ちたかったんだ。

これで、オレの負けは無え♪


「ど、ど、どうしました。何で撃たないんですか!ゴダードさん、ラルフも!炎龍は丸腰なんですよ!」

ああ……一人、ボンクラが居たか……。

アホそうな息子の方が、戦士としては優秀って事だな。

まあ、普段から修羅場は手下任せなんだろうぜ。


「ケッ、奴が丸腰……ルパートの旦那、本当にそう見えるんですかい?」

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