第165話 【ジム、潜入】 ハッタリ、応酬

ソファーに空いた44口径の風穴から、向こうを覗く。

椅子に縛られたバーニーに、あの小男が自分の身長に見合わ無えライフルを突き付けてやがる。

ジャコビーって野郎は、用心深く棚の後ろに身を隠し、左手に握ったコルト・ウォーカーの銃口をこっちに向ける。

他の連中も銃を構える。


一見、追い詰められたこの状況、当然ヤツ等もそう思ってるだろうぜ。

だが……。

「おいおい、それで、オレを追い詰めた積りか?」


「強がりは止しな!こっちには人質が居るんだぜ!ガキをバラされたく無けりゃあ、さっさと銃を捨てて出て来い!」

息子の方が、如何にも脳筋な怒声を上げる。


「ハハハ、分っちゃい無えな」

「ど、どう云うことだ!」


「もし、仮にだ、バーニーを殺したとして、その後の事さ。まさか、オレ相手に、この部屋から生きて出られるなんてこと、考えちゃい無えだろな」

つまり今天秤に乗っかてるのは、他人の命だけじゃ無え、自分の命も乗ってんだって事さ。


「た、大した自身ですね。銃の名手は炎龍さん、アナタだけでは無いのですよ。こちらのゴダードさんも、この世界で名の知れた殺し屋だ。例え炎龍相手だとしても、遅れを取る事は有りませんよ」


「ハッ、その馬鹿デカいコルト・ウォーカーでか?そんな重くて取り回しし辛い銃で、オレより早く撃てるってのか?」

さっきは遅れを取っちまったが……ま、ソイツは忘れるとしよう……。


「それにだ、そもそも、ここでオレが大人しくテメエらの手に掛かったとして、テメエらがバーニーを生かして町に返すとも思え無えし、その保証も無え。で、提案だ」


「て、提案だと?」

「ああ、大人しく、バーニーを返しな。そうすりゃぁ、テメエらの命は助けてやるぜ。ここから、大人しく出てってやる。その後は、まあ、勝手にすれば良いさ。もう一度町に仕掛けて来るってんなら、改めて相手してやるし、この地を離れるってんなら、わざわざ追う様な面倒くせえ事はし無え」

まあ、どっかで出くわす様な事が有れば、挨拶代わりに鉛玉をぶち込んでやるさ。

何しろ、兄さんに直接手を下したのは、ホバートの野郎だろうが、この小男が命じなけりゃ、兄さんは死ぬことは無かった筈だからな。


「ふ、ふざけるんじゃぁ有りませんよ!アナタこそ自分の立場をわきまえたらどうです。こっちには人質が居るんですよ。それに、もうすぐホバート達も戻って来る。それこそ、私に何か有れば、アナタも甥御さんも命は有りませんよ」

ハッ、さっきは、役立たずだとか言ってた割には、ホバートの野郎の事を買ってるじゃ無えか。

だが……。

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