第141話 アジト、突入

「ああ、構わん。コイツはワシにとっての、まあ、ちょっとしたおまじないみたいなもんでな。損得は関係無い」

「そうかい、まあ、旦那が良いってんなら……じゃあ、オレは表だ」

「なら、ワシは裏だな」


左手の親指で、十ドル金貨を跳ね上げる。

そして、落ちて来た金貨を、左手の甲で受け止め、右手で押さえる。

その右手をそっとどけると……。


「フッ、ツイておるな。コイツはお前さんのだ」

金貨をジムに投げて渡す。


「ヒュー♪本当に良いのかい?」

「ああ、どうやら、ワシらは相当ツイておるらしい。まさか、一発目で出るとはな。幸先の良い事だ」

「ワシらはって……。旦那もって事かい?」

「フッ、無論だ」

「ハハハ、賭けに負けてツイてるって話、始めて聞いたぜ♪」


ワシが左手の甲にえがいた魔法陣は、魔弾の魔法陣。

一発目で外したと成れば、この後、左手で放った銃弾成り魔法成りは、残りの六発分、確実に当たると言う事だ。

ともかく、ワシ等は付いておる。


「さてジム、そろそろ、隠身かくりみの魔法を掛ける。さっきも言ったが、あの中に入った後は、出来るだけ喋らん方が良い、ヤツ等に声を聴かれては不味いからな。それと、銃もいざと言う時は兎も角、バーニーを救い出すまでは、出来るだけ撃つな」

「ああ、分ったぜ」


右手に刀印を結んで、隠身かくりみの魔法陣を描き、ジムの胸に押し当て付与する。

ワシもまた同様に隠身かくりみを施す。


それと、いつもの如くアモンの魔法陣も。

昨夜から立て続けに四度目となる、アモンの魔法陣。

少し、時間は空いたとは言え、一瞬、全身の筋肉に痛みが走る。

まあ、今日はこれが最後に成ろう……我慢だ。


「では、そろそろ、参ろうか」

術が解けぬ様に、囁く様に伝える。


そして、足音を忍ばせて、見張りの男達に近づく。

本来なら、このままいっきに間合いを詰め、軍刀で切り殺した方が早いが、それだと、目立ってしまって隠身かくりみが解けるかもしれん。

まあ、解けないまでも、術が弱まる事には成ろう。

夜ならともかく、こう日が昇ってからではな。


ジムに手で合図して、一旦岩陰に潜む。

それから、先ほど錬成したスリングショットを取り出し、同じく錬成した鉛玉をづがえ、左手でスリングを引き、放つ!


ヒュンッ!とスリングが微かな風きり音を上げる。

左手に宿した魔弾が発動し、放った鉛玉は右側の男の額に命中する。

刹那、男の頭部がザクロの様に割れ、その脳髄のうずい脳漿のうしょうが、背後の板塀にぶち撒かれる。

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