第58話 カウ
「カウだったら厩舎の中よ。ゴブリンの襲撃が有った時に、エドが急いでカウ達を厩舎の中に入れたらしいのよ。それで、結構無事に残ってるわ。じゃ、宜しくねジム♪」
「宜しくって……行っちまった……ハァ~。しゃあ無え……ん!そうだ、さっき旦那手伝ってくれるって」
「おいおい、ワシが手伝うと言ったのは……」
「まあまあ、そうお固い事は無しで頼むぜ、旦那♪」
強引にジムに背中を押されて、裏手に連れていかれる。
白い家の裏手には、広大な牧草地が広がり、荒らされてはいるが、牧草は青々と生い茂る。
肥沃な大地なのだろう。
その、牧草地の中に、かまぼこ型の屋根が見えてくる。
あれが厩舎か。
ジムは巨大な
「ジム、手伝うと言っても、ワシは牛の屠殺などしたことは無いぞ」
まあ、殺めた命は数え切れんがな……。
「牛?屠殺?何の事だい、旦那?
うん?
カウとは牛の事では無いのか?
それに、屠殺せんなら何故、あんな巨大な
そして、ジムは
呆けているワシにジムが声を掛ける。
「どうした、旦那?ハハ、まさかカウを見た事無え、なんて冗談は止してくれよ」
「すまんが、始めて見る。コイツがそのカウとやらか?」
「ハァ~……この地でカウを見た事無え、なんて初めて聞いたぜ……。前に黒の森を出たのは初めてとか何とか冗談言ってたが……旦那の場合、何処までが本気か冗談か、いまいち判んねえとこが有るから、始末に負えねえぜ……」
ハァ~、冗談などでは無いのだがな……。
「ま、いいぜ。コイツはカウ・リザードってヤツさ。見ての通りでっかいトカゲの一種さ」
そう、目の前の巨体は、巨大な爬虫類のそれだ。
だが、ワシの知る爬虫類と異なるところもある。
ワシの知る牛よりも巨体なのはもとより、その巨体のわき腹に
「ジム、アレは乳でも吸っておるのか?」
「見ての通りさ。乳牛の様に乳を出して、肉も牛の様に美味い。だからカウ・リザードってんだ。この過酷な試される大地じゃ、牛は中々育た無えからな。だから、この地で牧場と言えば、カウ・リザードの牧場の事さ」
成るほど……あの黒の森と呼ばれておった地を離れ、ここのところ人里を旅しておったから忘れていたが、ここは異世界で有ったな。
「で、ジムそのデカい
「ああ、コイツの事かい。そりゃ勿論、シッポを切るのさ♪」
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