第150話 【ドウマ、陽動】 血祭

うむ、しかし、思いの外立ち直りが早いな。

手下どもの動揺も収まって見える。


だが、未だ始まったばかりだ。

続けようか。


吊るした次の死体に触れ、隠身かくりみを解く。


ほう、大したものだ。

ホバートは瞬時に気付きおったか。

すかさず、手下に指示を出しておる。

その手下の一人が、朽ちた小屋の梁にぶら下がった死体の元にショットガンを構えながら慎重に歩み寄って来る。


右手に隠身かくりみの魔法陣をえがき、朽ちた瓦礫の陰に潜んで待つ。

男が近付きワシの横を通り過ぎた刹那、隠身かくりみの魔法陣をその男に押し当て、瓦礫の陰に引きずり込み、声も上げさせぬまま締め上げて意識を刈り取る。

そして素早く男を抱え上げ、穴の開いた小屋の屋根に飛び乗る。


フッ、さすがにホバートもその手下共も、驚いておる。

何しろ目の前で、仲間が一人消えたのだからな。


いかに隠身かくりみとて、こう注視されておる状況では、さほど効果は無い。

ほんの一瞬、姿が見えなく成る程度だ。

だが、男の意識を刈り取り、屋根に飛び乗るには十分な一瞬だ。


さて、此処ここからは血を流していくとしよう。

手口は残忍で有ればあるほど、バーニーの救出に来たとは悟られまい。

そもそも町の人々は善良だからな。


だが、ワシは違う。

何しろ、ワシは前世、帝都の魔人と畏怖されておった程だ。

仇成す敵には容赦などせん。


気を失って居る男の喉元に爪を立て、アモンの膂力りょりょくで喉笛を引き千切り、屋根から突き落としてその場から離れる。


大の男共が慌てふためいておる。

何しろ、ヤツ等の目には、目の前で消えた男が突如屋根の上から落ちて来たのだからな。

それも、喉笛を引き千切られて。


ワシが突き落とした男は、落とされた衝撃でか意識を取り戻し、暴れのた打ち回る。

喉を千切られ、絶叫を上げる事も出来ず、そのまま絶命する。


「や、屋根の上です!」

ホバートが我を取り戻し指示を出し、手下共が崩れかけた小屋を取り囲んで、その屋根の上に銃撃を始める。

当然、そこにもうワシはおらん。


さて、まだ屋敷が近すぎる。

もっと、誘き出さねば。


再度、左手に隠身かくりみの魔法陣をえがき、右手に軍刀を抜いて、小屋を取り囲込んで居る一番後ろの男の背後に回り込む。

まだ、ワシの隠身かくりみは健在だ、気付かれてはおらん。


そして、無駄にウィンチェスターをぶっ放しておるその男の背に、魔法陣を押し当てる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る