第122話 女帝の鉄壁の魔法

「それで、お前さん程の男が手こずる理由は?」

ゴブリン共を切り伏せながら、背中合わせに問いかける。


「ソイツは……ま、見りゃ判るさ」

ババン!

と、ゴブリン共を撃ち抜きながら、首をクイッと女帝エンプレスに振る。


そう言われて改めて、女帝エンプレスに視線を向ける……な、なんだアレは!?

女帝エンプレスのシルエット自体は、女王クイーンと差して違いは無い。

その、大きさも女王クイーンより二回りデカいのは、遠目でも分かっておった。


だが、女帝エンプレスの体全体が岩で出来ておる。

まさか、ゴーレム……いや、そうでは無い。

あの血走った目、アレは断じて魔法で生み出された魂を持たぬゴーレムのソレでは無い。

明らかに、憎悪をむき出しにしたケダモノの目。


ジムは、女帝エンプレスと成れば、間違い無く色付きの魔力結晶を持ってる筈だと言っておった。

と、成れば、あの姿……。

「ヤツの魔法か!?」

「そう言うこった、旦那。あのまとった岩で、旦那から貰った弾でも貫け無え」


ハァ~……何とも、想定外だ。

魔法が使える敵だとは、想定しておったが、まさか防御に特化した魔法だとはな。

さて、如何どうしたモノか。


それにしても、ワシの錬成した45ロングコルト喰らって、見た所、ヤツのまとう岩に欠けた所が見て取れん。

どう云うことだ?


うむ、考えるより、試しに撃ってみる方が早かろう。

十四年式の照星をヤツの胸元に合わせて、引き金を引く。


ズドン、ズドン、ズドン!


ヤツの胸元を厚く覆った岩が、弾け飛ぶ……が、瞬時に欠けた部分の岩が盛り上がる。

「なんと、再生するのか!」

「ああ、そのせいで、何発大砲ぶち込んでも切りが無え。どうする、旦那?」


再生する鎧とは、また厄介な……。

だが、黒の森でやり合ったリンドヴルムと違い、無傷と言う分けでは無い。

まあ、あの岩の鎧の中に在る本体に傷を負わせるに至っておらんが、あの鎧は砕くことが可能だ。


成らば、再生が追い付かん程のダメージを一点に集中させれば、貫けるやも知れん。

つまりは、女王クイーンを仕留めたのと同じ手だ。


「ジム、ワシが渡した弾は何発残ってる」

「あと、六発だ。だが、コルトの薬室にゃ薬莢しか残って無え」


「うむ、だったら今すぐ装弾しなおせ。ゴブリン共の面倒はワシが見る」

「OK!旦那、頼んだぜ!」

バババン!

と、ジムは手にしている銃の弾丸を撃ち尽くして投げ捨てると、愛用のコルトを抜いて慣れた手付きで排莢と装弾を始める。


その間ワシは、襲い来るゴブリン共を次々に切り伏せる。

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