第78話 オーガの襲来

「町長さん、本来、債権の売買に関して、あなた方の了承を得る義務は無いのですが。彼方方あなたがたとは長い付き合いです。最後に確認致しますが、異存はお有りですかな?」


「いえ、デュモンさん、異存などは……しかし、ドウマさん本当に宜しいのですかな。ゴブリンの討伐隊の費用も持って頂けると?」

「うむ、油田開発には邪魔な存在だからな。それと、デュモンさん、スマンが医薬品や資材など、町の再建に必要な物資の手配も頼みたい。もちろん費用はワシ持ちで構わん」

「承知しました」


町長が深々と頭を下げる。

「ドウマさん、何とお礼を申して良いやら……」

「なに、油田開発と成れば長い付き合いに成る。よろしく頼む」



その後、ワシ、デュモン、町長の三者で細かい確認事項の確認、それと幾つかの書類へのサイン等が行われる。

当然、これらの行為にヘルマス一家いっかとやらは無関係だ。

だが、奴らはこの場から退場することなく、未だに留まって居る。

何かを待つ様にな……。



と、その時、集会所の外が何やら騒がしい。

ふと、戸口に目をやると、若い男が此方に駆け寄ってくる。

「オーウェンの旦那、町長、大変だ!オーガだ!オーガが町で暴れています!」


「な、何だと!」

場内がざわめく。

「ケニー、詳しく話せ」

オーウェンが若者に問いただす。


「そ、それが、デカい幌馬車五台を率いた商隊が、町の入り口を通り掛かったらしいんですが、ゲートをくぐった途端その幌馬車の中からオーガが現れて、町で暴れ出したんです」

「幌馬車からオーガがだと!?まて、まて、今幌馬車が五台と言ったが……まさか!」

「はい、町で暴れてるオーガは五匹です!」

「ば、馬鹿な!何でこんな事に!」


オーガ!?

「ジム、スマンが、そのオーガとやらは何者だ?」

「ああ、巨人のバケモノさ。トロール・ベアの倍はでけえ」

「巨人と言うと、そ奴らも亜人か?」

「いや、まさか。ヤツらに知性も感情も無え。有るのは本能のみさ」


「いや~まさに災難ですな。クックック♪ゴブリンに襲撃された矢先、オーガですか。そう言えば、デカい幌馬車を率いた商隊と仰ったが、こんな話を聞いた事が有ります。奴隷の取引を禁止された奴隷商が、新たな商品としてオーガに可能性を見出みいだしているとか何とか。まあ、上手く行ったなどと言う話は聞きませんがね。クックック♪」


成るほど、こ奴等これを待っておったのか。


「き、貴様!お前の差し金だろ!」

今にも小男に飛び掛からんとする、オーウェンを町長が止める。


「クックック♪心外ですな。言い掛かりにも程が有る。私は紳士ですよ。奴隷商などと関係がある筈が無い。クックック♪」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る