第77話 商談成立、怪しい素振り
「で、そのヌーグ砦のレナード・グリフィス大尉は何故
「俺だって、この町の出だぜ。だから、お前と同様、敬愛する中佐殿に叩きつけてやったのさ♪」
「ん、レナードお前も、軍を辞めちまったのか!?」
「あ、いや、オレが叩きつけたのは休暇届けの方さ。ハハハ♪」
「ああ、済まんが商談を進めたいのだが、宜しいか」
デュモンがそう促す。
確かに、少々話が逸れたな。
「デュ、デュモンさん、商談を進めると?本気ですか?この私を差し置いて、こんな猫の亜人などと?」
「何か問題でも有りますかな、ヘルマスさん。二百万ドルの債権を三百万ドルで買い取って下さると言うのです。しかも、これ程の魔力結晶を売却された代金を、我が銀行にお預け下さると言う。猫の亜人かどうかなぞ、全く関係無いこと。まして、先の戦争で奴隷制度も廃止され、亜人に対する差別も無くなった今、ドウマさんの申し出を断る理由には成りませんな」
「な、何だと!このヘルマス
そう、凄む小男をデュモンが冷たい目線で睨みつける。
「うん?聞き捨て成りませんな。それは、私に対する脅しと云う事ですかな?」
ほう、デュモンと言う男、見かけに寄らず、凄みの有る目だ。
小男が一瞬、身震いしおった。
「い、いや、少々興奮して、失礼な事を……しゃ、謝罪する」
「うむ、良いでしょう。先ほどの事は、聞かなかった事に」
それを聞いて安堵の表情を浮かべた小男は、今度は矛先をワシに変える。
「本当に、こんな高い買い物をして宜しいのかな?まだ、この町はゴブリン共に狙われているのですよ。今のままでは、油田開発など、まま成りませんでしょうな。クックック♪」
「なに、ワシらにはゲティスバーグの炎龍殿が付いておるさ♪」
「だ、旦那!アレは軍に、体よく祭り上げられただけだ。そんな、たいそうなモンじゃ無え!」
ジムは声を押し殺して、そう抗議する。
どうやら、そのたいそうな二つ名はお気に召しておらんらしい。
「それにだ」
もう一度魔力結晶をポンと叩いて、デュモンに目をやる。
そのワシの意図を理解してか、彼が頷く。
「承知しました。では、売却代金から、討伐費用を差し引くと云う事で宜しいかな。少々日にちを要する事に成るかも知れませんが、私の方からフロンティアギルドと相談して、十分な討伐隊の手配を致しましょう」
「そうして貰えると助かる」
まあ、ワシが、そのゴブリンとやらのコロニーに出向いて、魔法で焼き払ってやっても構わんのだがな。
彼に頼んだ方が、目立たずに済む。
「チッ!後悔しますぞ!」
小男はそう、舌打ちと捨て台詞を吐く。
ん?
小男の視線が一瞬、集会所の戸口へ向く。
そして、
それに、ほんの僅か、ヤツの口角が上がる。
戸口付近に立っていた人影が一つ消える……。
フッ、どうやらひと悶着、起こす気らしい。
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