第69話 朝食、テールベーコン
翌朝、子供達に飛び乗られて目を覚ます。
「猫ちゃん♪朝ご飯だよ♪♪」
さすが双子と言うか、見事なユニゾンで、ワシをベットから引きずり降ろす。
そして、そのまま食卓に連行される。
「おや旦那、珍しくゆっくりだな」
「ああ、すまんジム。久しぶりに、寝心地の良いベットだったもんでな」
実のところ、久しぶりと言うより、この世界で生まれて初めてだ。
何の緊張も無く、深い眠りに付けたのは。
ニーリーの宿屋でも、ベットで仮眠を取ったが、あの宿屋では熟睡できる筈も無い。
食卓に着くと、ジェシーがスライスしたライ麦パンと、カリカリに焼いたベーコンと目玉焼きを出してくれる。
ジムはそのライ麦パンにベーコンと目玉焼きを乗せ、頬張っている。
うむ、美味そうだ。
ワシも同じ様にして頬張る。
ライ麦パン特有の風味と、ベーコンの塩気、それと卵のトロリとした濃厚な黄身の味わいがよく合う。
ん?しかしこのベーコン……豚では無い。
「どうだい旦那、我が家に伝わる、自家製テールベーコンのお味は?」
成るほど、テールベーコンと言うからには、そう言う事か。
「うむ、悪く無い」
ふと、横を見ると、二人の子供達もジムとワシをまねて、ライ麦パンにベーコンと目玉焼きを乗せて頬張っている。
口の周りは、ベーコンの油と、卵の黄身でべとべとだ。
まあ、愛らしいものだな。
その子供達を見るジェシーも、優しく微笑んでおる。
不幸のただ中にあるのは変わり無いのだろうが、ジムが帰って来た事で、いささかでも安心感が戻ったのだろう。
穏やかな朝食の時間も終わり、そろそろ、集会所に向かう時間なのだが……。
「ジム、それと、ドウマさん。私は
「ジェシー、良いのかい?」
「ええ、どんな話し合いに成るのか、大体の想像は付くもの。町民皆が集まる様にって話だったけれど、そんな話し合いの場にこの子達を連れて行きたくは無いわ。かと言って、この子達だけで留守番させる分けにも行かないし、それに何より……エドを一人にしたく無いの」
「そうか……分かった」
まあ、それが良かろう。
相手次第だが、場合によれば、ひと騒動有るやもしれん。
「さて旦那、そろそろ行くかい?」
「ああ、そうしよう」
一旦、客間に戻り、例の物をジムから借りた袋に入れ、肩に担いで玄関へ。
そして、ジェシーと子供達に見送られて、町の中心に有る集会所とやらに向け馬を歩かす。
「で、旦那、ソイツがお土産ってヤツかい?にしても結構でけぇな、ホントにスイカでも入ってんのか?」
「ああ……いや、食いモンでは無いさ。一応な」
そう言えば以前、トロール・ベアとやらが、食っておったな。
とすれば、食おうと思えば食えん事も無いかも知れん。
まあ、食いたいとも思わんがな……。
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