第109話 口裏合わせ
「うむ……こうなれば、已むを得まいか……お前さんに全て話すとしよう」
まあ、この男なら信用も出来る。
それに、その方が、いざと言う時にも役立つやも知れん。
そして、前世で魔導士をしていた事、その世界で天寿を
「ハァ~…………何とも、驚いたぜ。旦那は異世界の魔導士様だったとはな。でも成るほど、だから弔いの言葉に、次は良き来世をって事か」
ジムが満点の星が輝く空を見上げる。
「なら、兄さんも今頃その来世とやらで……」
「うむ、この世界か別の世界かは分らんがな。新たな生を得て居るだろう」
ワシの様に前世の記憶までは持っておらんだろうがな。
「しかし、お前さん、ワシの話を疑わんのか?」
「まあ、確かに突拍子も無え話だが、リンドヴルムの魔力結晶に、旦那のその魔術を目の当たりにすりゃぁな。それに……」
「それに?」
「ハハ、その方が面白いじゃ無えか。あの兄さんが今頃何処ぞの異世界で、赤ん坊やってるって思った方がさ♪」
そう屈託なく笑う。
「さて、問題はこの旦那の魔法だな……。今聞いた事、旦那は誰にも知られたく無いんだろ?」
「うむ、いかにも」
「まあ確かに、知られる分けにはいか無えわな、こんな芸当が無色の魔力結晶で出来るなんてな。普通、この世界の魔法は色付きの魔力結晶を使うんだ。無色はあくまでもその術を補助する動力源さ。もし、こんな事が政府や軍のお偉方に知られたりしたら……」
「知られたとしたら?」
先ず、厄介な事に成るだろうな。
「そうだな、目を付けられたのが軍なら……間違いなく、将官待遇で召し抱えられるだろうな。で、政府のお偉方なら、魔道技術省の長官か副長官の椅子は固い所だろうな」
「はぁ~……何とも、それは厄介な事だな……。
「ハハハ、だが、さっきも言ったが。俺が軍からかっぱらって来た魔道具って話は、さすがに無理だぜ。まあ、オーウェンや町の皆はともかく、レナードは現役の軍人だからな。これ程の魔道具がどれ程の戦略的価値が在るかは、直ぐにピンと来る。とても、大佐如きがかっぱらえる
「うむ、やはり無理が有るか……」
「だったら、いっその事、旦那が黒の森か何処かで手に入れた魔道具って事にでもすればどうだい。どのみち、旦那は得体が知れ無えってのは、皆も承知さ。何しろ、あんな馬鹿デカい色付きの魔力結晶を持ってたんだからな。それに比べりゃ、城壁を生み出す魔道具持ってたなんて、おまけみたいなものさ」
成るほど、確かにそう言う考え方も有るか……。
「已むを得まい、そのシナリオでいくとしよう」
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