第102話 ゴブリンとの前哨戦 【攪乱】

「で、それは構わんのだが、お前さん。まさかその腰の銃一挺で突っ込む気か?」

ワシとジムを除く四人は、それぞれ二挺以上の銃を持っておる。


レナード、ギデオン、クライドは、腰の銃とライフル。

ホバートは、ライフルは持っておらんが、腰に四挺も銃をぶら下げておる。

しかも、ヤツの銃はS&Wのスコフィールドだ。

こいつは中折れ式で、ジムの銃とは違い装弾し易い。


「ああ、持って来んの忘れちまってな」

「何ならワシの銃を使うか?」

まあ、ゴブリン共の後方を攪乱するだけなら、軍刀で十分だからな。

「あ、いや、大丈夫さ。今回は、チョット借りる当てが有るんだ♪」

ん?

まあ、良かろう。

この男の心配なぞ、するだけ無駄と言うモノだ。



そして、ジム達と離れ、岩陰に潜む。

「さて、この辺りで良かろう」

先ずはいつもの様にアモンの魔法陣を描き、胸に押し当て、次にグラシャ=ラボラスの魔法陣をえがき、胸に押し当てる。

隠身かくりみ

では、参るとするか。


一応、隠身かくりみはしているが、岩陰を渡り歩く様にヤツ等を回り込む。


フッ、岩陰に潜んでいる伏兵が何匹か居るな。

まだ、後方に回り込んだわけでは無いが、何匹か始末しておくとするか。


そっと、単独で潜んでいるゴブリンの背後に近付くと、悲鳴を上げられぬ様に、ソイツの口元を押させ首を絞め上げ、そしてそのままゴキリとへし折る。

未だ、回り込んでる最中の行きがけの駄賃だ。

銃は使う訳には行かんし、軍刀で刺し殺しても血が流れる。

血の匂いで気付かれても、塩梅あんばいが悪いからな。


「もう二、三匹は行けそうだな」


そして、さらに三匹始末して、ゴブリン共の背後に回り込む。

さて、ジム・カラバ大佐は敵の攪乱を御所望だ。

成らば、少々派手な方が良かろう。


乾いた地面にクロケルの魔法陣をえがく。

ニーリーの宿屋でジム達を叩き起こしたのと同じ魔法陣だ。

魔法陣に魔力を流して、発動させ、少し離れた岩の陰に身をひそめる。


そして、刀印を結んで額に押し当てる。

刹那、轟音が轟く。

無数の軍馬の蹄の音だ。


無論、そんな軍馬の大軍など居やせん。

クロケルの魔法陣が周囲に幻聴を聞かせているのだ。

と、言っても、聞こえる有効範囲は有る。

ゴブリン共には聞こえるが、恐らくジム達には聞こえておらんだろう。

だからこそ尚の事、都合が良い。


ゴブリン共は突然の轟音に浮足立ち、慌てふためいておる。

さて、ヤツ等のその命、刈り取らせてもらう。

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