第138話 スズメの見たモノ、一羽目

バーニーを救出する為には、出来る限り音無く敵を始末したい。

襲撃されている事を気付かれん程にな。


銃では銃声がうるさい、発火炎マズルフラッシュもある。

軍刀で切り殺すにしろ、血しぶきや匂いが目立たんとも限らん。


故に、目立たず、何処どこから攻撃されておるか気付かれん。

そう言う、得物が欲しい。


更に、もう一つ魔法陣をえがく。

いつも武器や弾薬の錬成で使っておるハルファスの魔法陣だ。

その中央に、小さな魔力結晶の破片を置いて、魔力を流し込む。

中央の魔力結晶が白く輝き、形を変え始める。

そして、魔力の流れを操り、ワシの望む形、材質へと……。


「だ、旦那、ソイツは?」

錬成されたソレを見て、ジムが問いかける。

「うむ、まあ、ちょっとしたオモチャさ。だが役には立つ」


試しに、錬成したそのY字型の下側のグリップを握り、Y字の上端を結ぶゴム紐に小石をつがえて運悪く通りがかったサソリを狙い、放つ。

ヒュー♪とジムが口笛を吹く。

威力は、申し分なさそうだ。


「コイツはスリングショットと言う。見ての通り、オモチャの様な成りだが、鉛玉をつがえて頭を狙えば、意識を刈り取るぐらいは出来る。何ならお前さんにも一つ錬成しようか?」

「ああ……オレは遠慮しとくぜ。オレはコイツとコイツで十分さ」

そう、腰のコルトと、担いでいるウインチェスターを叩く。

「うむ、入用に成ったら言ってくれ」


そして、スリングショット用の鉛弾を錬成し終わる頃、「チュン!」と鳴き声が上空から聞こえて来る。

「早いな、一羽目が戻って来たか」


舞い降りたスズメに歩み寄る。

「それで旦那、そのデッカイ小鳥ってのからどうやって、見て来た情報を聞き出すんだい。見た所、言葉をしゃべる様には見え無えぜ」

「コイツはワシの使い魔だ。コイツの見て来た事を、ワシも見る事が出来る」


スズメの額にワシの額を合わせ、魔力を同調させる。

ぼんやりと、上空からの風景が見えて来た。

「どうやら、コイツは東の渓谷へ向かわせた奴か」


眼下に渓谷が見える。

その渓谷に沿って飛行する。


ん、渓谷沿いに生い茂る木々に隠れて、屋根が見える。

ヘルマス一家いっかのアジトか。

だが、人影が見えん。


高度を下げ旋回する……が、やはり気配がまるで無い。


「で、旦那?」

「ハァ~、ハズレのようだ。だが気落ちする事も無い、次のが戻って来た」


「チュン!」

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