第56話 町を狙う何者か……

「ジム、お前さんの魔銃は炎の魔法を放つと言ったが、同様にいかづちの魔法を放つ銃はあるか?」

「……ある、にはある。いかづちの魔法は青の属性だが、普通の青の銃じゃぁ撃て無え」


「青の銃?」

「ああ、青の属性は風を操るんだ。青の銃は空気の塊を飛ばしたり、強力な物は小さな竜巻を起こしたりも出来る。結構まれに出回っている物だ。だがいかづちの弾、ライトニング・ブレットを撃てる銃と成ると早々見無え。何しろ、その銃を作るのに相当純度の高い、青の魔力結晶が要るんだ。そうだなサンダー・ラットの魔力結晶でも使えば、それ成りに名の知れたガンスミスなら、いかづちを放てる銃、ライトニング・キャスターを作れるかもしれん」


「サンダー・ラット?」

「ああ、成りは小さいネズミなんだが、いかづちを放って攻撃してくる。藪の中にでもひそまれて攻撃されでもしたら、手が付けられん。戦時中、味方の部隊が不用意にサンダー・ラットの縄張りに入っちまって、全滅した事が有った」

うーむ、そう言えば、森の中でそんなのとやり合った事も有ったな……。


「つまり旦那は、兄さんはライトニング・キャスターの使い手に撃たれて、命を落としたと?」

「うむ、十中八九な」


「しかし、なんでまた兄さんが……。自慢じゃないが、兄さんはオレと違って、命を狙われるほど人に恨みを買う様な奴じゃ無かったはずだぜ。それに、さっきも言ったが、この町にちょっかい出して、その何者かに何の得が?」


「さあな、理由までは分からん。今のところな。だが、この町で起こっている事、置かれた状況、それと、お前さんの兄の死因。それらを重ね合わせて辻褄を合わせて行けば、自ずと見えてくるモノがある」

「見えて来るモノってのは?」


「理由は分からんが、何者かがこの町を困窮させ様としているのだろうな。その為に、そのゴブリン共を使って、この町に嫌がらせをしているのさ」

「だが、そんな嫌がらせするのに、わざわざゴブリンの巣から未成熟な女王をさらうなんて面倒な事するか?そんな手間を掛けたって、退治出来ないものじゃ無い。近くには砦もある。それこそ軍が出張って来て退治されちまったら、骨折り損って奴だぜ」


「で、その軍ってのは、退治に向かったのか?」

「い、いや、何かと理由を付けて……って、まさか旦那は……!」

「ハハ、いや、軍がこの町にちょっかいを出そうとしていると迄は、さすがに思えんよ。もしそうなら、こんなまどろっこしい事なんぞせず、もっと直接的な手に出るさ。だが、そうだな、その何者かと砦の指揮官辺りが繋がっていて、賄賂でも握らせていた、と言ったところだろうな」


「なら何で、兄さんは殺されたんだ?仮に、兄さんが砦に辿り着いて援軍を要請しても、いつもの様に何かと理由を付ける成りして、無視すれば良かっただけだろう」


「フッ、その辺りがそ奴らの限界だったのだろう。いくら指揮官が買収されていたとしても、襲われている町へ援軍を送ら無いなどとは、さすがにな」

「成るほど、砦の全てを丸め込んでるって分けじゃ無いって事か」

「そう言うことだ、だから、町からの援軍要請が砦に届かない様に、そのライトニング・キャスターとやらの使い手を待ち伏せさせていた」

「そして、兄さんはソイツに……」

殺されたエドは、幼少の頃とは言えジムに手ほどきした程の使い手だ。

そのエドを真正面から、しかも正確に心臓を射抜いたと成れば、なかなかの強敵やもしれんな……。


そしてジムは、怒りを押し殺す様に虚空を見上げる。

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