第143話 【ドウマ、陽動】 更に惨殺

殺した男が死んでおると、遠目に判らん様に背後から背中を支える。

むこうから近づく男からは、ただ座り込んで居る様に見えておる筈だ。

何しろ、血は殆ど流れてはおらんからな。


「オイ、どうした。昨日の酒が未だ残ってんのか?まったく、しっかりしろ」

男が近付いて来る。

今のところ、ワシに気付いた様子は無い。

殺した男が酔って座り込んでるだけと思っておる様だ。


さて、この男はどう始末するか。

出来るだけ血を流さん方が、ヤツ等の戦力を削り続ける事が出来るんだが……。


フッ、良い物が有った。

少し離れた所に、丁度良い長さの荒縄が落ちておる。


「ホラ、さっさと立た無えか!」

男が死んだ男の手を取り、引き起こそうとする。

すかさず、殺した男の背後を離れ、荒縄を拾い上げ男の背後に回り込む。


背中を支えておったワシが離れる事で、男のむくろが力無く仰向けに反り返る。

「オィッ…………!」


男が異変に気付き、声を上げようとしたのと、ワシがその首に荒縄を巻き付けたのはほぼ同時。

容赦無く、そのまま締め上げる。


ブチッ!

朽ちかけておった荒縄が千切れる。


マズイ!

咄嗟に軍刀の鯉口こいくちを切り、手を掛けるが……その男も力無く、さっきの男と重なる様に前のめりに倒れる。

その男の顔を覗き込むと、見開いた目には生気は無い。

念の為、首筋に手を当て脈を取る。

どうやら、死んでおる様だ。


二人の死体を、小屋の裏に引きずって隠し終えた頃、更に足音が近付いて来る。

「フッ、後何人かはこの手で行けそうだな」

身を潜め、近付いて来るのを待つ。



それから更に、三人の男を絞め殺し、辺りの様子を伺う。

「うむ、どうやら、外を見回る者はもう居らん様だ」

と成ると、ジムが潜入しやすい様に中のヤツ等をおびき出さんとな。さて、如何どうしたモノか……」


単に銃撃したとて、立て籠もられる。

身構えられてしまっては、奇襲の意味も無い。

返って、逆効果だ。


それに、ワシ等がバーニーを救いに来た者と気付かれるのもマズイ。

真っ向から仕掛ければ、そうと気付かれ、人質を盾にされては手が出せん様に成る。


「と、すると、そうだな……少々恐怖を煽ってみるか」


外で異変が起こってる事をほのめかしつつ、正体不明の恐怖を煽る。

そうすれば、ヤツ等は浮足立ち、判断力を奪うことにも成ろう。


さて、その恐怖を演出する為の小道具……と言うより出演者は六人、いや、外のも含めれば八人おる。

まあ、それだけ居れば十分だ。

「では、先ずはその準備だな」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る