第115話 結局、銃撃戦

さっき発砲した男が、御者の真横に付き、御者に銃口を向ける。

当然の事だが、隠身かくりみの術が掛かっているワシの事には気付いておらん。


だが、銃口を突き付けても、前方に顔を向けたまま、無言で馬車を走らせる御者の異変には気付いたらしい。

「オイ、ハイマンの野郎の様子がおかしい!誰か、荷馬車に飛び移って確認しろ!」

その男が指示を出す。

どうやらこの男が、指揮を取って居る様だ。


荷馬車に並走する騎馬は、左右に二騎づつ。

その内の右側後方を走っていた騎馬が、荷馬車に近付いて来る。

「うむ……さすがに乗り移られると、ちと面倒だな」


御者が逆らわん様に、更に爪を喉に食い込ませ。

十四年式を御者のこめかみから離し、荷馬車に飛び移ろうとする男に、照星を合わせ引き金を引く。

パン!

その男は、地面に投げ出され、そして程無くゴブリンの群れに飲み込まれていく。


「なに!何だ今の銃声!誰が撃った!?」

指揮を取って居った男が声を上げる。


で、当然の様に、ワシは荷馬車の左側を並走するその男に銃口を向ける。

御者の首根っこを掴んだまま、左側を狙うのは少々やりづらい……。


一瞬、男と目が合う。

どうやらさっきの発砲で、隠身かくりみは解けたか。

「テ、テメエ、何者だ!」


パン!

「チッ!ハズしたか」

ワシの発砲と、ヤツがワシに気付き、一瞬手綱を引いたのがほぼ同時。

不自然な体勢での射撃と相まって、放った弾丸が男の鼻先を掠める。


バン、バン!

男も発砲し返してくるが、咄嗟の事だ、狙って撃ってるわけでは無い。

単なる牽制。

当たるモノか……だが……。


「荷馬車に敵が居るぞ!構わん撃ち殺せ!」

男は荷馬車から距離を取り、そう怒鳴る。


男のその言葉に、御者が声を上げる。

「ヒィッ!う、撃つな!」

まあ、ワシを撃ち殺せと言う事は、御者の男の生死も問わんと言う事に成るからな。


バーン!

荷台の木片が弾け飛ぶ。

ん、散弾か!?


左手後方の男が、ショットガンを構え、撃ってきおった。

次弾が来る!


咄嗟に、御者を盾にして、引き金を引く。

十四年式とショットガンの銃声が重なる。


「ぐわっ!」

その悲鳴も二つ重なる。

ショットガンの男はワシが錬成した八ミリ南部を受け落馬する。

そして、御者は散弾を浴び、血を流してぐったりしておる。


ま、双方、因果応報と言うヤツだな。


ターン!ターン!

「うっ!」


さっきの男が、馬の鞍のホルスターからカービン銃を抜き、撃ってきおった。

その内の一発が、再び御者に命中した様だ。


パン!

今度は咄嗟に、ヤツの馬を狙って引き金を引く。

的が大きい分、外す事は無い。

男の乗った馬がいななく。


当然だが、八ミリ南部程度の弾を受けても、馬は死なん。

だが、後方にはゴブリン共の群れ。

馬が走れなく成れば、即命取りに成る。


男の乗った馬が、ジリジリと速度を落としていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る