第135話 三つの隠れ家

ワシが髑髏の錬成に使った魔法陣は、ダンタリオンと申す悪魔の魔法陣。

この悪魔の権能は、人に幻覚を見せると言うモノだ。


だが、単なる幻覚では無い。

視覚だけで無く、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、五感全てに影響を与える。

もし、見せられた幻覚の中で、炎で焼かれれば、その痛みもまた現実の如く感る事に成る。


ダンタリオンは人間の心を読み取り、その者のもっとも恐れる苦痛と恐怖を、その幻覚として見せる事が出来るのだ。

更に、この権能の邪悪な所は、一瞬の時が何時間にも感じられる事だ。

恐らく、この男も、このほんの数秒の間に、無限に続くとも思える苦痛を、幻覚の中で感じておることだろう。


そのおぞましい体験を何時間も……いや、幻覚の中では何年と感じておるやもしれん。

その苦痛と恐怖が、無限に続くと成れば、当然人の心は壊れてしまう。


男は絶叫を止め、うな垂れる。

ほんの数秒で、男の頬はげっそりと成り、目は生気無く落ち窪む。


「だ、旦那……」

「うむ、心配ない。魂が死んでも、記憶は肉体に残る。後は聞けば、無条件で何でも答える」


改めて、男に質問する。

さらった子供は何処どこに連れて行かれた?」


「アジト……」


「で、アジトってのは?」

ジムが男の肩を掴み問いただす。


「南西の廃砦……」


「廃砦だな!」

ジムが問い返す。


「南東の牧場跡……」


「おいおい、どっちだっての!」

感情的に掴みかかるジムを制止する。


「東の渓谷…………そのどれか……」


ハァ~、厄介な事だな……。

「つまり、お前さんは、その三か所のどこに連れて行かれたか迄は知らんと言う事か?」

「知らない……」


「成らば、その三か所のアジトまでの地図は描けるか?」

「描ける……」


「ギデオン、こ奴の縄を解いてやってくれ、こう成ってしまってはもう逃げる事も無い。それと、誰か何か描く物を」



そして、縄を解かれ、神父から受け取った紙と羽ペンを手に、虚ろなまま男が地図を描き上げる。

「それにしても旦那、この地図……」

随分と雑な地図だが仕方あるまい。

「はぁ~、言うな……まあ、方向さえ分れば如何どうとでも成る。さて、ヤツ等の意表を突く為にも、直ぐに向かうぞジム」


「向かうったって、その三か所のどこに向かうってんだ、ドウマ」

レナードが尋ねる。


「うむ、まあ、詳しくは言えんが、少々当てが有ってな」

勿論、魔法で探し出す。

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