第65話 その魔力結晶の価値

「で、連隊のエライさんは、いかにデカくて強力な魔物と言えど、魔銃を装備させた三千人の兵士の銃撃で倒せると判断して、三千挺の魔銃で銃撃を加え続けたらしいんだが……その兵士達が、魔銃に装弾してある魔弾を全て撃ち尽くして、目の前のリンドヴルムを見てみると、全くの無傷だったらしいぜ。仮にだ、三千挺の銃に六発の魔弾が装填されていたとすれば、全部で一万八千発の魔弾だぜ。それだけ喰らってたおせ無えなんて、ホントどんだけバケモンだよ……。そんで、その後は、まあ御想像通りの展開さ」


「生還した三十人ほどの兵士を残して、ヤツに消し炭にされたか喰われたかと云う事か……」


「ん、ヤツ?旦那……まさか、そのヤツってのに!?」

フッ、相変わらずさとい男だ。


「まあ、一度な……」

「おいおい、良く無事だったな、旦那……」

「いや、ワシの銃も刀も全く歯が立たなんだ、危うい所であった」

幸い、バアルの槍で始末は出来たがな……。


「はぁ~、生還しただけでも、大したモンだぜ。ところで、やり合ったって事は旦那は、そのヤツの姿を見たんだろ。どんなだった?報告書には巨大な蛇に見えたとか書かれていたが、伝説では竜って事に成ってる」

「うむ、確かに巨大な蛇の姿をしてったな」

まあ、実際は、ワシの手のひらに乗るほどの手と、小さな羽根が生えておった。

目撃証言より、伝説の方が真実を言い当てておる稀有なケースだな。


「まあ、そう言うことさ。旦那もヤツとヤリ合ったんなら、リンドヴルムの恐ろしさが分ったろう。とても人の手に負え無え相手ってこった」

「成るほどな、だがもし、ヤツをたおせたとしてだが、その魔力結晶はどのくらいの価値に成る?」


「さあな……想像も付かんが……毒や火の玉を放って来るって話だ、色付きなのは間違い無え。それも、多分旦那の頭ぐらいは、あんじゃ無えか」

いや、色付きはワシの頭より二回りほど大きい。

無色のは、大きすぎて持って来れんかったが……。


「そうさね、そんな大きな色付きの魔力結晶なら、一千万ドルぐらいには成るわね。そうすりゃ、町の借金は全額返済出来て、その上、大規模な討伐部隊を組んでゴブリン退治も出来るでしょうね」

マーサはため息をつき、続ける。

「そうすれば、全て解決なんだけどね……失われた命以外は……ハッ!御免なさいジェシー、無神経な愚痴なんか……」


「うんうん、良いのよ気にして無いわ。でも、ホントにそうなれば……」


町を救う事が出来ても、失われた命は戻らない。

彼女と子供達は、以前の様な暮らしに戻る事はもう無い。

だが、それでも、町が救われたなら、次に踏み出す一歩も早かろう。


さて、物は二つある。

何方どちらを手放すか、思案のしどころだな。

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