第147話 【ホバート、戦慄】追い詰めてやりますよ!
手下共が、闇雲に崩れかけた小屋の屋根に銃撃を加える。
私の目の前で、こんな芸当が出来るヤツに、コイツ等の弾が当たるとも思いませんが、運よくあぶり出されて来れば、私が仕留める迄。
ですが……一向に反応が有りませんね。
仕方がない、これ以上無駄弾を撃たせるのも得策じゃ無い。
「撃ち方止め!」
手下共の銃撃は止む。
さすが、と言うかなんと言うか、元軍人崩れだけの事はある。
指示に従うのが早い。
まあ、それ以外に脳の無い奴等ですけどね。
その手下共の一人が声を上げる。
「オイ!ビンスの野郎が居無ぇぞ!」
なに!?
まさか、また一人消えたと言うのですか!
慌てて、小屋を取り囲んだ奴等の数を数える。
十人に銃撃させていた筈が、九人しか居無い。
チッ!
また目の前で……しかも、今度は消えた事にも気付かなかった。
刹那、トスッ!と重い音を立て、何かが目の前に転がる……く、首だと!
手下の男どもが、騒ぎ出す。
まったく、少し見直したと思ったらこれだ……。
スコフィールドを抜いて、空に向かって一発ぶっ放す。
バーン!
「皆さんみっとも無いですよ。そうやって慌てふためかせるのが、狙いなのが分から無いのですか!何者かは知りませんがね」
首は、こっちに向かって転がって来た。
と言う事は、その反対側……有った、また気付かない内に、新たな死体が木に吊られている。
しかも、その木の根元に、転がって来た首の持ち主の、首無しの胴体まで。
そう、これは明らかに挑発ですよ。
私達を動揺させると同時に、誘き寄せようとしている。
その目的は、一体何か……?
まあ、考える迄も無い、この屋敷からヘルマスの手下を遠ざけたいと考えて居るなら、そのヘルマスの命でしょうね。
もし、そうで無いなら、それこそ炎龍が甥っ子を助けに来たかだが……その可能性は低い。
どっちにしろ、ヘルマスの身を案じるならば、一旦屋敷に戻るのが正解なのですが……フッ、私がヘルマスの身を案じる?
有り得ませんよ、そんな事。
ヤツの安否なんか、知ったこっちゃ無い。
第一、仮に屋敷に戻っても、この正体不明の敵に一人づつ消されるのが落ちですよ。
そこに転がる首や、喉を裂かれた男みたいにね。
だから、この挑発に乗るしか選択肢が無い。
まったく、忌々しい話ですよ。
ならばいっそ、受けてやる。
「冷静に成って下さい。その何者かは、私達より少数の筈。正面から攻めて来ないのはそう言う事です。畏れる事など有りませんよ。ああやって死体を吊るして、私達をおびき寄せようとしていますが、逆に追い詰めてやりますよ」
二人殺されても、私の猟犬は未だ何頭もいる。
コイツ等を使って、追い立ててやりますよ!
イヒヒ♪
妙な緊張感と高揚感からか、意味も無く笑みがこぼれる。
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