第168話 【ジム、潜入】 刹那の銃撃

張りつめた、緊張感の在るこの状況。


ほんの僅か、ヤツ等の視線が落ちた金貨に向く。

別に、ヤツ等も見たくて見た分けじゃ無え、条件反射ってヤツさ。

ジャコビーって野郎の眼球も僅かにピクリと動く。


今だ!


咄嗟に右下にしゃがみ込みながら、腰の後ろに差したベビー・ドラグーンを右手で抜く。

体の動きが遅え。

集中して、時が止まった様に感じられても、別に体を早く動かせるってもんでも無え。

全身、泥沼に浸かってる感覚だぜ。


で、最初に銃口を向ける相手は、ジャコビーって野郎と言いたいところだが、そんな余裕は無え。

あの小男が、ドジって引き金を引きかね無え。

まずは、奴からだ!


引き金を引いたまま、銃口を小男の眉間に合わせて、腰だめのまま、左手の親指で撃鉄を叩く。


バーーーン!

ゆっくりと動く時間の中、銃声が間延びして聞こえる。


小男をったかなんざ、確認する必要も暇も無え、次はジャコビーだ!

銃口を左に向け、陰気なヤツの顔の眉間を狙い、人差し指で撃鉄を叩く。


だが、ほぼ同時にヤツの馬鹿デカいコルト・ウォーカーの銃口が火を噴き、二つの間延びした銃声が重なる。


バーーーン!

ドゴーーーン!


それでも尚、構っちゃ居られ無え。

次は、息子のデカい面に銃口を向け、中指で撃鉄を……うっ!

左肩に衝撃が走る。

44口径の弾丸で左肩が砕かれ、左腕の神経が途切れていくのが分る。


だが未だ、ほんの刹那、動く筈。

そのまま構わず、中指で撃鉄を叩く。


バーーーン!


あと二人!


小男の右後方で拳銃を構える男に銃口を向け、薬指で撃鉄を叩く。


バーーーン!


最後に左後方の男に向け、小指で……。

チッ、左手が動か無え!

力も入ら無え!


左肩に激痛も走る!

集中が途切れる!

動き始める時の中、咄嗟に右手の親指で撃鉄を弾く。


バン!

ターン!


ベビー・ドラグーンの銃声と、最後の一人が構えるライフルの銃声が同時に轟く。


そして……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る