第31話 魔弾、二十ドル
「この黒の森で暮らしていたんだろ。狂暴な魔物共が
成るほど、だからワシがこの森から出たのが初めてだと言った時、
「まあ、生きて出ることが無いってのは大げさだけどね。
まったく、鋭い男だ。
「フッ、ああ、一度な」
「じゃあ、旦那に任せるよ♪その方が確実だ」
十ドル金貨を一枚、ジムに投げて渡す。
「ん、コイツは?」
「魔弾とやらの威力を見てみたい。確かデカい熊の頭を吹き飛ばせると聞いたが」
「おいおい、確かにそう言ったが、あれは普通のデカい熊の事さ。あんな化け物の事じゃねえよ」
「どうした、
「そりゃまあ、当たり所に寄れば、
もう一枚投げて渡す。
「はぁ~、負けたよ旦那には。だが、
「ああ、分った」
通常、リボルバーを持ち歩く際は、何かの拍子で撃鉄がシリンダー内の弾丸に触れて暴発しない様に、一つ空の薬室を作り、その薬室の穴に撃鉄が収まる様に携帯する。
ジムもまた、普段は最大六発入るコルトのシリンダーに五発のみ装填しているのだろう。
銃をホルスターから抜き、その空の薬室に例の魔弾を装填し、少し馬を前に歩かせると、左手首に銃を持った右腕を乗せる様にして構え、撃鉄をガチャリと引き起こす。
まさかこの男、拳銃で二百メートル先の標的を射抜くつもりか……ハハハ、面白い。
馬を夢中に喰らっていた熊が、此方に気付き威嚇する様に立ち上がる。
ジムがワザと殺気を放って、狙いやすい様に熊を立たせたのだ。
ジムは「ふ~」と短く息を吐き、止める。
ズドン!
正に銃が火を噴く。
通常の45ロングコルトの弾丸を撃っても、ああは火を噴くまい。
ジムは火球を放つと言ったが、さすがに高速で撃ち出されるソレを見る事は出来んかったが……。
放たれた魔弾は、クマの右目に直撃し、そのまま頭部の右側三分の一程を吹き飛ばす。
そして、クマは崩れる様に後方に倒れる。
「見事!」
ジムは手綱を引いて踵を返し、ワシとすれ違いざま、十ドル金貨を一枚投げて寄こし、口元に笑みを浮かべながら言い放つ。
「じゃあ旦那、あとは頼んだぜ♪」
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