第30話 考える事は同じ

ジムが連れて来た馬の背に、背嚢リュックとずだ袋をつ積み込み、鞍の上に飛び乗る。

思った通り、あぶみには足が届かない。

それでも、手綱を引いて、バランスを取って馬を操る。

まあ、何とかなりそうだ。


「それじゃあ、ジムに猫の旦那、参りましょう」

「良いぜ♪」

「ああ、分った」


街道は、森に沿って真っすぐ進む。

バリーの話ではこの先で街道は二手に分れるらしい。

真っ直ぐに進むと、ヌアザと言う町に直通らしいが、川が在り、橋が落とされていて渡れんと云う。


左に進むと、ニーリーという町が有り、そこを経由してヌアザに向かうという話だ。

そして、ニーリーの町の手前にも川が有り、橋が架かっているが、そこは健在だと云う事だ。

確かに何とも、バリーがいぶかしむのも無理はない。

これ見よがしに、ニーリーという町に人を呼び込んでいる様では無いか。

これは、ひと悶着有りそうだな。



馬車を挟んで、先頭をジムが、後方をワシが縦列を作って進んで行く。

出立しゅったつして数時間経った頃、前を行く馬車が止まる。

恐らく、その前を行くジムが止まったのだろう。

「ん、また盗賊でも出たか?」


警戒しつつ馬を操り、ジムの隣に移動する。

約二百メートルほど先だろうか、街道の真ん中に黒く大きな影が見て取れる。

見覚えのある姿だ。

六本脚の巨大な熊……ヤツか。


「旦那、トロール・ベアだ。森から出てきて、なんか喰ってるみたいだがあれは……鞍か。多分、昨日の盗賊共が乗っていた馬がヤツに襲われたみたいだな。で、どうする旦那?」

「どうするも何も、お前さんの選択肢は?」

あのクマをたおすのは容易たやすいが、この男がどう動くか、少々興味がある。


「そうだなぁ~、逃げるか、ヤツの食事が終わるのを待つか、それともるかだが……。まあ、逃げるってのは無しだな。ヤツは逃げる者を追いかける習性がある」

「なら、喰い終わるのを待つか?」


「おいおい、馬一頭だぜ。ヤツがいくらデカいと言ったって、一度に食い切れるもんじゃ無い。多分二、三日獲物の前から動かねえなアレは……。それに、ヤツが獲物を喰い終わった後どうするか知ってるかい、旦那?」

「ん、腹が一杯に成って昼寝でもするのか」

「いいや、新たな獲物を求めて狩を始めるのさ」


「と成ると……おのずと最後の選択肢に成るが、お前さん、何か策は?」

「策も何も、俺のコルトじゃ、ヤツの分厚い皮膚を貫けねぇ。どっちかって言うと、旦那を当てにしてるんだが」


フッ。成るほど、考える事は同じか。

ジムもワシの腕が知りたいらしい。

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