第154話 【ドウマ、陽動】 容赦のない二人

やはり、この男は危険すぎる。

まだ微かに隠身かくりみの効力が残っておる内に、始末しておくのが良かろう。


ヒュン!


スリングを放った刹那、ワシの微かな殺気を感じてか、ホバートが狂乱して居る手下共の中に飛込み、手下の一人を盾にする。


むっ、絶妙な位置取り!

スリングが放った鉛玉は、三人の男をつらぬき、ホバートが盾にした四人目の男の胸に突き刺さって止まる。


なんとあ奴、魔弾の掛かった鉛玉を止めおった!

今まで、魔弾を止めた者など記憶に無い。

単なる偶然とも思えん、ヤツの超一流のガンスリンガーとしての本能であろう……。


だがもう一発、魔弾の効力は残って居る。

素早く、スリングショットに鉛玉をつがえ……。


バーン!


刹那、スリングショットの柄が砕け散り、オレンジ色の粒子へと変わる。

チッ!抜かった!


「ドウマッ!」

ホバートがワシの名を叫ぶ。

どうやら、隠身かくりみは完全に解けたか。


咄嗟に、十四年式拳銃をホルスターから抜く。

もう、銃声を気にする事も無い。


パン、パン、パン!

バーン、バーン!


十四年式とスコフィールドの銃声が重なる。

ヤツは、手下共の入り乱れるこの状況で、容赦無くスコフィールドの引き金を引き、容赦無く手下を盾にワシの銃撃を防ぐ。


唐突に始まったワシとホバートとの銃撃に巻き込まれた手下共は、更に狂乱し、手当たり次第に撃って来る。

当然、薄暗い建物の中での乱射だ、仲間同士の流れ弾に当たって、数人が倒れる。


ホバートはと言うと、混乱して居る手下共は放置することに決めたらしい。

まあ、やるだけ無駄だろうし、それよりもワシと対峙する上での良い盾とでも判断したのだろう。

何とも、実に上手く手下共の体を使ってワシの弾をかわしておる。

しかも、狂乱して居る手下共はその事に未だ気付いておらん。


さて、成らば更に混乱させてくれよう。

パン、パン!

ホバートに放った一発はかわされ、もう一発は手下の一人を絶命させる。

かわす事で、体勢を崩したホバートの隙を突いて、十四年式を咥えて軍刀を抜き放ち、飛び込む様に奴等に切り込む。

瞬時に三人を切り倒し、ホバートに迫る。


あと一歩で、ホバートの首を刃に捕らえると言うところで、ヤツは手下の一人の襟首を掴んでワシの前に差し出し盾に。

軍刀がその男の首を刎ね飛ばした刹那、ヒゲがチリチリと。

マズイ!


ズバーン!

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