第87話 オーガの戦利品

「ドウマさんでしたな。あらためて自己紹介する。この町の自警団の団長を務めているオーウェン・クレイグだ。よろしく頼む」

そして、差し出された手を握り返す。


「それで、二人を呼んだのは、他でもない。コイツを渡そうと思ってな」

オーウェンが事務所にいる若い男に命じて、何やら奥から運ばせて来る。

半透明な結晶、結構な大きさが有る。

どうやら、魔力結晶の様だが、それが五つ。


「コイツは?」

ジムのその問いに答えたのは、レナードだ。

「コイツは、お前達が仕留めたデカブツのだ。俺も葬儀の後、オーウェンの旦那に連れて行かれて、最後の一体の解体に駆り出されて、酷い目に合ったぜ。俺はケガ人だっての!」


「ハッハッハ、オーガに吹き飛ばされて、その程度の怪我で済む様なヤツは、多少こき使ってもどうって事無かろう。で、この戦利品、どう分ける?少し時間は掛かるが、こっちで現金化して渡す事も出来るが」


「うむ、そういう事なら、ワシが始末したオーガの魔力結晶はそのまま戴こう。残りの四つはジムの物だ、ジムが好きにすると良い」

「だ、旦那!あれは……」

「ん?あれは、お前さんが軍の倉庫からかっぱらって来た魔弾で、お前さんが始末したオーガ共の魔力結晶だろ」

「はぁ~、良いのかい旦那?」

「なに、お前さんも知っての通り、金には困って居らんさ。まあ、そうだな、何ぞ気が引ける所でも有るなら、お前さんの旧友に酒でも奢ってやると良い。フッ、オーガに吹き飛ばされた挙句、取り分無しと言うのも気の毒だからな」


「ハハハ、良い事言うぜ、アンタ♪そもそも、あんな大砲持ってんなら、俺が吹き飛ばされる前に使えってんだ」

「はぁ~、良いぜ。じゃあオーウェンの旦那、俺の取り分は現金化してくれ。で、百ドルをオレに。残りは、ジェシーの口座に振り込んどいてくれ」


「ジム、良いのか?これだけの魔力結晶だ。一つ、そうだな五千ドルほどには成る。合わせて二万ドルの大金だ。構わんのか?」

「ああ、良いぜ。どうせ、オレがそんな大金持ってても、下手なポーカーでっちまうのが落ちさ」


「そうか、分った。だったらコイツを持って行け」

重量感の有る巾着袋を、ジムに投げて寄こす。

「ちょうど百ドルちょい入ってる筈だ」


「ヒュー♪良いのかい、オーウェンの旦那?」

「まあ、オーガ五匹に襲われた割には、大分安上がりな被害で済んだからな。魔力結晶の方は売れ次第、ジェシーの口座の方に全額を入れておく。あまり深酒はするなよ、いつまたゴブリン共が攻めて来るか分からんからな」

「へいへい♪」


そして、五つ並ぶ魔力結晶の内、最も大きいモノがワシの目の前に置かれる。

「それで、これがアンタのなんだが……」

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