第17話 天を貫く、光の槍
大蛇か!
デカいな……持ち上げている鎌首だけで、ワシの背丈の五倍以上はある。
しかし……成るほど、蛇は獲物の体温に反応して狩をすると聞く。
この暗闇の中、ワシの居場所を正確に把握しておったのは、そのせいか。
見た所、ヤツの目が確認できん。
恐らく退化しておるのだろう。
それにしても、傷を負った形跡はやはり見て取れんか。
大の刻印の銃弾ですら鱗一枚剥がせん様では、これは、いくら撃っても無駄だな。
接近戦に切り替えるしかあるまい。
いつもの通り、身体能力を上げる為、右手で刀印を結びアモンの魔法陣を
続けて電撃の魔法陣を描き、左手の親指で軍刀の
準備は整った。
「いざ、参る!」
アモンの権能で強化された身体能力には、既に慣れた。
いっきに飛び出し、大蛇との間合いを詰める。
ヤツの懐にたどり着くまでに一度火球を放たれたが、易々と
大蛇に近付いて、改めて実感する。
なんとも、太い胴体だ。
ワシの何倍もある。
一閃で両断するのは、まず不可能……成らば。
抜刀、抜きざまに斬撃を連撃で浴びせかける。
一閃する度、紫電が走り、大蛇が咆哮を上げる。
電撃は効いている様だ……だが、固い!
キン、キン、キン、と金属的な音を立てながら、軍刀の斬撃は弾かれる。
固い鱗は傷を付けるのがやっとか。
ゲボッ!
マズイ、ヤツがなんぞ口から吐き出しおった!
咄嗟に、後ろに飛びずさって
「むっ!」
なんと言う臭気……毒か!
ヤツは続けてゲボッ!ゲボッ!と周囲に毒を吐き、ばら撒き続けておる。
一体、何を考えて……。
成るほど、そういう事か。
ヤツの周囲は、ヤツの吐いた毒の沼で足場もない程。
ワシはブーツを身に着けてはいるが、まずあの毒に侵された所へは足を踏み入れん方が得策だな。
そうなると、到底近付けそうもない。
だが唯一、ヤツの目の前の地面には毒が吐かれておらん。
つまり、正面から来いと誘っておるのだ。
「はっはっは、面白い。その誘い乗ってやろうではないか」
成らば、ワシも手加減は終いだ。
全力で仕留めてくれるわ!
軍刀を鞘に納め。
ヤツの吐く毒と火球の攻撃をバックステップで距離を取り、
左手では堕天使アルマロスの魔法陣、そして、右手で
左右の刀印の指先に、魔法陣が輝いて浮かぶ。
「参る!」
ヤツの正面からその懐に向かって走りだす。
神経を集中し、研ぎ澄ます。
ヤツの動き、周囲の状況、ワシ自身の筋肉の動きまで、ゆっくりと感じ取ることが出来る。
ヤツがその大きな
当然だな、その為にヤツは自身の正面以外を毒で侵したのだ。
左右の地面は毒の沼、回避することは出来ん。
左手の刀印を突き出し、アルマロスの魔法陣でヤツの放った火球を受け止める。
パーン!と弾ける音と共に、火球とアルマロスの魔法陣が、オレンジの粒子と成って弾けて消える。
思った通り、あの火球は魔法!
堕天使アルマロスの権能は、あらゆる魔法を打ち消す権能。
もっともあの火球に、ワシが魔法陣に込めた魔力以上の魔力が籠って居ったら、打ち消すことは出来んかったがな。
ヤツが次の火球を放とうと、再び
右手の刀印を、ワシの頭上に在るヤツの頭に向け突き付ける……チェックメイト。
「貫け、バアルの槍!」
ズドーン!
眼前で雷鳴が轟き、眩い閃光が辺りを包む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます