第47話 八年ぶりの郷里
「それで、旦那はどうするんだい?」
ジムの問いかけに少々悩む。
ほんの数日、彼らに同行して旅をしただけだが、盗賊に二度襲われ、トロール・ベアとやらにも一度襲われておる。
ジムは当然、ヌアザを目指して居た分けだから、ここで駅馬車の彼らとは別れる事に成るのだろう。
そうなると、心配では有る。
「猫の旦那、俺たちの事でしたら心配無用ですぜ。ヌアザを抜ければ、目的のヌーグまではあと一日。それに、途中にはヌーグ砦も有って、この辺で盗賊しようって無謀なアホも早々いませんからね」
バリーを見る限り、気を使っている風でも無さそうだな、安心が見て取れる。
「しかし、ヌーグに着いたあとは、どうする?」
「勿論、客を乗せて折り返しますよ。それが仕事ですからね。ですが、今度はフロンティアギルドを通して何人か護衛を付けて貰うことにします。当然、費用は乗客持ちに成りますがね。ハハハ」
成るほど、それが良いだろうな。
盗賊共はワシとジムで粗方殲滅したとは思うが、何人か残党が残っておるかも知れん。
用心しておくに越したことは無かろう。
「そうだな、そう言うこと成ら、少々ヌアザで骨休めをさせて貰うとしよう」
「だったら、どうだい旦那、これも何かの縁だ、俺の実家に招待するぜ。美味いカウの肉を御馳走するぜ」
カウ?
ああ、そう言えば、実家は牧場だと言っていたな。
牛の肉か……化け物共の肉はもう飽きたからな、悪くない。
「では、馳走に成るとしよう。で、里帰りは何年ぶりだ?」
「そうだな、十七で陸軍士官学校に入って以来だから、かれこれ八年ぶりに成るかな」
「成るほど、お前さん程の勇者を
「はぁ~、旦那にはお見通しって分けか……。兄とは色々有ったのさ。両親が亡くなって直ぐ、家を出る事にしたんだが。兄に猛反対されて……」
「それで、気マズイか?」
「まあ、それも有るんだが、旦那を誘った理由は別さ。兄夫婦には五歳になる双子が居るんだ。会った事は無いがね」
「はぁ~、で、ワシをその双子に差し出す腹か……」
「ハハ、旦那に懐かない子供なんて居ないさ♪」
子供はとかく猫好きだからな……。
町の風景が見えてくる……何かおかしい!
町の手前に広がる広大な農地が、酷く荒らされておる。
柵も壊され、未だ青々としている小麦も無残なほどに掘り返されている。
「はぁ~、またですかい……」
「バリー、これは?」
「ゴブリンの仕業ですよ、猫の旦那」
ゴブリンだと?
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