第6話 野営と、これからのこと

森の中は、背の高い常緑樹が密集して生えているせいかかなり暗い。

だが、空を見上げる限り、木々の隙間から星が見える。

「夜か……。もっとも、ここが魔界ならば、朝日が昇るかどうか怪しいがな」


この様な暗い森の中でも不自由無く行動出来るのは、やはりワシがケットシーだからだろう。

この目は夜目がが効くらしい。


「とは言え、腹も空いた。今日のところは此処ここで野営だな」

でだ、この空腹を満たせる食材だが……やはりあれしか無いか。


錬成したナイフ改め、山刀を手に、頭部のないオルトロスの元に。

残った後ろ脚の片方に、山刀を振り下ろす。

一刀で両断。

「切れ味は悪くない」


その足を持って、環状列石の岩の一つをまな板代わりに皮を剥ぐ。

「この後が問題だな。今のワシなら、このまま生で食ったとしても、腹を壊す様な事は無いと思うが……やはり火を通したい」

うーむ、あの程度の魔法なら、いけるか……。


先ほど、山刀を錬成した魔法陣を一旦消して、再度魔法陣をえがく。

今度の魔法陣は、初歩中の初歩の召喚魔法。

問題無いとは思うのだが、やはり慎重に、丁寧にえがいていく。


魔法陣が完成し、魔力を慎重に注ぐ。

魔法陣が輝き出し、望み通りのモノが召喚された。

「どうやら、成功……と言う分けでも無いか……」


魔法陣の中央に召喚されたのはウィルオウィスプ、つまり鬼火、なんだが……。

「何だこれは、ワシよりも大きいではないか!」

想定していたサイズでは無い。


この体の魔力と魔法の相性が良すぎるのだ。

だから、バアルの槍や、錬成魔法同様、手加減が上手く出来ん。


「まあ、召喚したモノは仕方がない。取り合えず、肉でも焼くか……」

魔法のコントロールに付いては、おいおい訓練を重ねるしかあるまい。


オルトロスの足を持って、ウィルオウィスプにかざし、モモの部分に火を通す。

「中までで火を通すには、暫し時間がかかりそうだな」


さて、これからの事だが、どうした物か……。

先ずは、魔法の制御をどうにかせんといかんな。

下手をすれば、自身が放った魔法で、自身を焼き殺すなどと言う事にも成りかねん。

特に、召喚魔法は当面、ウィルオウィスプ意外は封印だな。


何しろウィルオウィスプがこれ程のサイズで召喚されたと言う事を考えれば、悪魔なぞ召喚しようものなら、制御不能におちいってどの様な惨事を招くか分からんからな。


暫くは、ウィルオウィスプの召喚と錬成魔法、そのあたりで魔法の制御の練習を繰り返すとしよう。


それと、ここがどう言う所かも知りたい。

もし此処ここが、本当に魔界だと言うのなら、修羅と成るしかないが。


しかし、近隣に人の住む集落でもあるならば、接触を図りたい。

上手く、コミュニケーションが取れる成らば、色々分る事も有ろう。


「そろそろ焼けたか」

ハグッ。

ひと口かじり取る。


「塩気が無いのは味気ないが、肉としての旨味は悪くない。少々筋張ってはいるがな」


明日、岩塩でも錬成してみるか……。

まあ、明日と言っても、朝日が昇るとは限らんがな。

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