名前も知らないあの人(店主)

「店主さん、めっちゃいい人だね」

「そうだな、名前も知らないけど」


 店主が客に接客している裏で隼人と香澄はひそひそと話をする。


 隼人が店主の名前を知らないという発言に、香澄は突っ込む。


「名前くらい覚えたらいいのに」

「なんだっけ、名前」

「私も覚えてないけど」


 香澄も覚えてないんかい、と言いあっているうちに客が帰ったらしく、店主がこちらにやってきた。


「店主さん、なんて名前なんですか?」


 コミュ力の化身みたいな存在の香澄が、先陣を切って名前を尋ねる。


 店主は目を細めて笑いながら答えた。


「ボクの名前はねえ、河合良夫だよ。まあぼちぼち覚えてもらって」

「河合さん! よろしくお願いします!」


 香澄は元気よく河合さんに挨拶する。


 河合さんは目を細めて笑いながら頷いた。

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