一人暮らし
外は寒かった。
隼人の適当な服を選んだ弊害か、十二月下旬の厳しい寒さを凌ぐのに充分な布の厚さはなく、隼人の身体は芯から冷やされていった。
「手、冷たいなあ」
香澄が呟いた通り、隼人は厚着をしていないため身体の芯から冷やされていったが、香澄は手袋を付けていないため手先から冷やされていった。
隼人は一瞬自分の手で温めることを考えたが、少し距離を詰めすぎだと考え、やめた。代わりにありきたりな質問を一つ。
「手袋持ってないの?」
「持ってたと思うんだけど、一人暮らしするときに実家に置いてきちゃた。手袋を回収するためだけに実家に帰るのも気まずいんだよね」
「その気持ち、わかる。帰りの気まずいよね。ってことは、住友さんも一人暮らしは反対された?」
かくいう隼人はといえば、一人暮らししたい隼人と一人暮らしさせたくない母親とで揉めに揉めた末に、生活費の一定割合を自分で稼ぐという前提のもと一人暮らしが承認された。
「うん、かなり反対された。でも、一人暮らしできて、清原くんにも出会えたから、反対を押し切ったことに後悔はないなあ」
「俺がなんたらはともかく、満足してるなら正解だったんだろうな」
「清原くんは、後悔してる?」
難しい問いに、隼人は考え込んだ。
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