俺も後悔してない

「俺も、後悔してない。というか、後悔する暇もないな。一人暮らしだと家事全般も自分でやらなきゃいけないし」

「私に会えたことは嬉しくないの?」


 にやにやしながら訊いてくる香澄を見て、隼人は憎めないなあと思いながら正面を向きなおす。


「……まあ、嬉しい」


 照れながら言った隼人の姿が香澄のツボにはまったのか、香澄は悪戯っぽく笑う。


「可愛い」

「それ、どういう意図で言ってるの……?」

「ただ、照れてる清原くんが可愛くて」


 香澄はまだにやにやする。


「……じゃあ、住友さんも可愛い」


 隼人による不意の反撃に、香澄は目を見開き、そして頬を紅潮させて押し黙る。


「あれ、住友さん? 大丈夫?」

「……そろそろ駅も見えてきたね、イルミネーション楽しみ」


 香澄が適当に誤魔化して、隼人は煙に巻かれたような気分になった。


「もうイルミネーション点いてるみたいだね。しばらく回ったら、買い物しよう」

「そうだね」


 香澄と隼人は、肩を並べて駅前のイルミネーションが広がる場所へ歩いた。

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