岳がやりやがった

「こんなの勝ち逃げじゃねえか」


 実際のところ、岳はフラれているので勝ち逃げというよりは負け逃げだが、隼人はそんなこと眼中になかった。


 隼人はどうすればいいのかわからなかった。


 積極的に関わるべきなのか、それとも距離を取るべきなのか。


「こういう時気楽に香澄に訊けたらいいのに」


 一人呟いても、香澄は今この家にはいないし、そもそもこれについて香澄に尋ねるのは本末転倒だ。


 隼人はなにもできず、ベッドに身を投げた。


「……香澄が帰ってきたときに快適に思えるようにしないといけないよな」


 今のところまだ家の中は散らかってはいないが、香澄が来る前の家はそこそこ散らかっていたのでそうはならないようにしなければ。


 隼人は軽く決意して、身体を起こした。

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