解散

「それにしても、隼人と香澄ってなんでそんなに仲がいいの?」


 日向がさらに疑問をぶつける。


「え、私たちそんなに仲良いかな」

「そう言われたら仲良くないような気もしてきた」


 日向の一貫性がない発言により、また危機を脱する。


 たまたまぶつかった相手が同じ学校の生徒だからといってここまで仲良くなるのはレアケースだ。できればそういう説明はしたくない。


「それよりさ、ドリアめっちゃ美味しくない?」


 隼人は少し無理やりに話題を転換させる。


 ちょっと無理があったかな、と日向と岳の顔を盗み見るが、違和感を感じているようには見えない。


 なぜなら、陽キャは細かいことを気にしない生物だから。


「味自体は普通に美味しいってくらいなんだけど、この値段でこの味って考えるとね」

「コスパ最強だよな」


 日向と岳も同意する。ちらりと香澄を見れば、香澄も黙って深くうなずいていた。


 そのまま隼人がこのレストランのよさを力説したり、日向が醤油で有名な回転寿司屋のよさを力説しているうちに、ドリアは徐々に減っていき……。


「じゃ、食べ終わったしそろそろ会計にするか」

「一人三百円だから計算がしやすいよね」

「あ、俺が払っとくから、一人三百円俺にちょうだい」


 岳は言いながら席を立ち、レジへ向かった。


 残った三人が岳に三百円を支払うと、解散の流れになっていく。


「じゃ、また学校で」


 隼人の合図を皮切りに、岳と日向はそれぞれ別の方向へ歩いていった。

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