一応、付き合ってます

「みんな、おはよ!」


 教室に入るなり香澄が元気な声でクラスに挨拶をする。


 隼人はその様子を見て、香澄の陽キャ度合いを思い出す。


 クラスの視線が香澄に集まるが、誰も隼人のことは見てない。


「じゃあ、隼人くん、また次の休み時間にでも」

「ああ」


 隼人と香澄の席は近くなかったので、仕方なく途中で別れる。


「あ、君見たことある。確か清川くん」


 隣の席の男子が俺に声をかけてくれた。


「いや、清原です」

「ああごめん、清原くん。住友さんとよく一緒にいる人だよね、どういう関係なの?」


 そこで俺は困る。


 香澄と付き合ってるって正直に言うべきなのか。


「……えっと、上の者に確認します」

「え、コールセンターの人?」


 ツッコミを受けながらも香澄にメッセージを送る。


『俺と香澄の関係って、なんて言うべき?』

『隼人くんはどう? 付き合ってるってバレるの』

『俺は、別にいいよ』

『じゃあ付き合ってるって言っちゃお』


 念のためちらっと香澄の方を見ると、香澄はこちらを向いてピースした。かわいい。


「で、えっと、俺と香澄の関係でしたっけ」

「あーうん、そう」

「一応、付き合ってます」


 一応東大生のノリで言う。


 彼は仰天した。


「え、住友さんと? すご」

「いえいえ、すごいのは香澄なんで」

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