帰宅
「ただいまー。まだちょっと慣れないなあ」
「やっぱり長く住んだ自分の家とはちょっと感覚が違うんだろうね」
香澄にとってここが慣れない家であることに配慮して、隼人は香澄が持っていた分の荷物を受け取って先に上がる。
そして、香澄も同じように靴を脱いで、家に上がろうというところで、慣れない段差に引っ掛かって体勢を崩し、ちょうど真正面――隼人のいる方へ倒れ掛かった。
こちらに倒れ掛かってくる美少女をそのまま回避するわけにはいかず、必然的に隼人は香澄を両腕で受け止めることとなった。
「ごめん清原くん」
「いや、慣れてないんだから仕方な……い……」
隼人はどこからか香るシャンプーの匂いを感じた。
どこからか、とは言ってもその発生源は明白で、身長差から、隼人の顔くらいの位置に香澄の頭頂部が触れている。
つまりこの香りの発生源は、香澄の髪である。
そのことに気づいた隼人は顔を赤らめて香澄を直立させて支えると、香澄に気づかれない程度に、これまでよりもほんの少し距離だけをとった。
「どうかしたの、清原くん。もしかして、怒ってる……?」
「住友さんが悪いわけじゃないし、全く怒ってない」
「じゃあ、どうしてちょっと距離をとったの?」
隼人が気づかれないように距離をとっても、香澄はそれをすぐに見破って隼人に意図を尋ねる。
「特に意識したわけじゃなくて……」
隼人は香澄の匂いがしたから距離をとったと正直に言うわけにはいかず、お茶を濁すしかなかった。
「そう? でも、下手に距離をとると相手は不安に思うこともあるから気を付けた方が良いよ」
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