観覧車

 前の二人はすでに観覧車に乗り、隼人と日向だけが地上に取り残される。


 微妙に気まずい空気が流れる中、まるで気まずい空気を打開しに来たかのように次のゴンドラがやってくる。


「じゃあ乗るか」

「そうだね」


 係員の指示の通りにゴンドラに乗るが、そこで二人は再び問題に直面した。


 会話の内容がない。


 二人はよく同じ空間にこそいるが、そもそも接点はほとんどなく、香澄という共通の友人を介して繋がっただけだ。運良く共通の話題が見つかるなんてことはこれまで起こらなかった。


「えっと、高いね」

「ああ、高いな」


 口では高いねなんて言っていても、ゴンドラに乗ってからまだ長い時間は経っておらず、未だに地面が近い。


「いい天気だな」

「そうだね、晴れてるね」


 会話の下手な人がよくやるやつ。


 隼人はちゃんとコミュ障だった。そして、紛れもない陽キャの日向だが、空気の如き隼人の姿を前になんの話題を振るべきなのか判断ができなかった……。


 早く終わってくれと願えば願うほど、観覧車が回るのが遅く感じられる。

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