隼人くん!
「あ、やっとこっち見た」
悪戯っぽく笑う香澄の姿に、周囲の観衆が見惚れている。
それは隼人にとっても例外ではなく、香澄の意地悪な笑顔が隼人の心臓の鼓動を速める。
「こっち来て、隼人くん」
周囲の視線もあり、もはや隼人が香澄の言葉に抗うことは不可能だった。言われるままに席を立ち、ゆっくりと香澄の方へと歩み寄る。
二人の距離が近くなると、ようやく香澄は口を開く。
「なんで無視したの、隼人くん」
「突然学校で距離を詰めたら、なにかあったのかって疑われるだろ。それであのことがバレたらまずい」
「まあ、そうだけど。なにも無視まですることないじゃん」
隼人は本気で怖くて香澄の表情を窺う。
香澄はにやりと口角を上げていて、心から怒っているわけではないことが伺えて、隼人は少し安心する。
「あらかじめ言ってただろ、学校で話しかけても無視するって」
「……」
「もう手遅れだから普通に話しかけてもいいけど、周りにはどう説明するの?」
「それは考えてあるよ。たまたまぶつかった相手が同じ学校の生徒だったから友達になったって説明する」
実際、ここまでの内容は全て正しい。ただ、その後で香澄が隼人の家に押し掛けて一緒に住むことを持ち掛けたというだけだ。
そう考えると、隼人と香澄の出会いも普通のもののように思えてくるから不思議だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます