友達から始めよう

「……そろそろ両方落ち着いてきたな、住友さん」

「そうだね、それじゃあ好きって言葉に答えるよ」

「……よろしくお願いします」


 二人で慌てふためくうちに、もはや二人の距離感は今日出会ったばかりだとは思えないほどに縮まっていた。


 距離感は縮まったものの、香澄の前置きによって、二人の間の緊張感は再び最大まで高まっていた。


 商店街の中心なのに。


 そう、香澄の持つ美貌と、二人の間に高まる異様な緊張感により、隼人と香澄は周囲の視線を集めているのだ。


「私も、清原くんと仲良くしたいとは思っているけど、まだ清原くんのこともよく知らないのにいきなり付き合うというのはちょっと抵抗があるかな」

「……」


 隼人の告白はすげなく断られることになった。


 しかし、香澄の態度から、彼女の言葉には続きがあるように思えて、隼人はなにも言わなかった。


「それに、よく知らないのに付き合うって、清原くんにも失礼だと思う。だから、まずは友達から始めませんか?」


 一息で言い切った香澄の、残念ではあるが温かみのある言葉を聞いて、香澄を称えるような聴衆たちの拍手がその場を包んだ。


 渦中の隼人も、目の前の美しい少女が、美しさだけではなく誠実さとかそんなものまでも持ち合わせていることを知って、呆然とするほかなかった。


「住友さん……」

「清原くん、どうかな?」


 目の前に香澄の手が差し出された。


 隼人が顔を上げると、不安そうな顔つきの香澄が、握手をしようと手を差し出していた。


 圧倒的な美少女である香澄のそんな姿を見て、隼人は香澄と握手をする以外の選択肢はなかった。


 元から断る気などさらさらなかったので、隼人は勢いよく香澄の手を掴んだ。


「こちらこそよろしく、住友さん」

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