修羅ワロス

「で、俺が香澄に告ったのがどうかした?」

「岳が香澄に嫌な思いをさせてないか心配で」


 その言葉を聞いて、隼人は日向の面倒見の良さを感じると同時に自分の力不足を実感する。


 香澄が岳に告白されているという事実を知っていたのに香澄の気持ちを訊かなかったのは同居人として不適切だ。


 香澄の方を伺うと、彼女はばつが悪そうに回転寿司のレーンの方を眺めていた。


「そんなことするわけないだろ」


 岳は若干語気を強めながら否定する。


「そうとは思えないから訊いてるの。心当たりはない?」


 日向が岳に尋ねる。


 本人に直接尋ねればいいんじゃないかと隼人は考えた。


「田圃さん、直接香澄に訊けばいいんじゃないの?」

「それもそうだね。一応、岳にも訊いとこうと思って」


 日向は今度は香澄の方を向いた。


「で、香澄。岳がなんか嫌なことしてなかった?」

「相坂くんは特にはなにも。気持ちは嬉しかったし」


 その言葉を聞いて、隼人の心臓がゆれる。


 隼人と香澄の関係はただの同居人ではあるが、香澄が岳からの告白を喜んでいることで岳に嫉妬してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る