あまりにも主婦

「それじゃあそろそろ昼食にしようか、どうする?」

「お世話になってる身だし、私が作るよ。今なにある?」


 これまでの隼人であれば、まさか学校一の美少女の手料理を食べられるとは思ってもいなかった。


 だがここ二日間の隼人はもはや状況理解の神と化していて、もう混乱することはなかった。


「そうだな……肉は三種類あるよ。卵もあるはず……。住友さん、一人暮らしだったから料理できるんだね」

「お、この牛肉高いやつだ。まあ私高校生だし、自炊くらい出来ないと一人暮らしはちょっと厳しいよね」

「それ使っていいよ、せっかく住友さんが引っ越して来たんだし。そうだよね、家計的に厳しいよね」


 一気に進化した隼人の適応能力と、聖徳太子かのように四方八方から話しかけられることに慣れた香澄。二人は器用に二つの話題を並行して会話した。


 というか、二人の間で繰り広げられる会話の内容が完全に家計に悩むおばあさんたちだった。


「ありがと、絶対美味しく料理するから楽しみにしてね。あと、食費は私も払うから」

「楽しみにしてる。食費を払ってくれるのは助かる。家事の手伝いもたまにはやってくれるか?」

「半分は私がやるよ」


 隼人はなにも思わなくなってきた頭で、仕事量が今の半分になるということか、と喜びの歓声を上げた。表には出さない。


 しばらく会話したのち、高級牛肉を使った、普段の隼人なら絶対に作らないようなお洒落な料理(名前は不明)が運ばれてきた。


「住友さん、めっちゃお洒落な料理作るんだね」

「この肉はもともと清原くんのものだから、ちょっと気合入れて作っちゃった」

「すごく美味しそうだ。いただきます」

「はい、召し上がれ」


 それから隼人と香澄は取り留めない会話をしつつゆっくりと昼食を食べ進める、優雅な休日の昼間を過ごした。


 隼人も香澄も、普段は適当に作った料理やあまりものを一人で食べていて寂しかった中、突然喋り相手が出来て、双方テンションが爆上がりした。

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