岳と日向

「最近さ、岳と日向が救いに思えてくるんだよね」

「え、香澄は?」

「そりゃ香澄も優しいんだけど、派閥争いの一環だと思うとちょっと怖い」


 俺に言葉に、岳と日向は笑った。


「私、そんなに怖いかな……」


 香澄が本気で気にしていて、これではまずいと隼人も言い訳を考える。


「怖いっていうか、態度は優しいんだけど裏でなに考えてるのかって考えるとちょっと不安」

「そっかあ……。私だって別に好きで派閥争いしてるわけじゃないんだよ? 玉の輿みたいにされてるだけ」


 香澄にも香澄の事情があるらしかった。


 玉の輿というのは言い得て妙で、自分が勝ち馬に乗るために積極的に力のある香澄に派閥争いをさせるなんて、まるで玉の輿だ。


「そうだよね、私ちょっと不思議だった。香澄そういうタイプじゃなかったはずなんだけど、って」

「だよね、日向ならわかってくれるよね!」


 香澄の声が喜びに溢れた。


 岳と隼人はそれを遠目に見守った。

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