席替え確率概論

「隣の席は相手派閥、どこを見ても敵味方入り乱れてて、いったいどこでリラックスしろと言うんだ」

「学校は戦場だからね。リラックスしてる暇はないよ」


 隼人の独り言に、恭介が恐ろしい返事をした。


 言わずもがな、隼人はそういうのがとても苦手で、重い息を吐く。


「早く帰りたい」

「せっかく住友さんと同じクラスなのに」


 うるせえこっちは一緒に住んでるんだよ、と威嚇するのは隼人の心の中だけだ。


 この事実を表に出したらなにが起こるかわからないし、恭介はそういう関連では一切信頼できない人間だ。


「そういえば、席替えあるらしいよ」


 どこ情報だよそれ、と内心で悪態をつくも、それが事実だとすれば確かに隼人にとっては朗報だ。


「このクラスは四十人クラスだから、席替えで指定の人が隣になる確率は約4%」

「なんの話だよ」


 なんでこの一瞬で式を立てて暗算できたのか。


「昨晩徹夜で覚えてきた」

「この程度覚えるのに一晩もいらねえよ」


 気持ち、恭介の目が充血しているように見えた。

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