華の高校生活なんてなかった

結局友達三人だけ

「香澄」

「隼人くんどうしたの?」


 家で隼人が香澄の名を呼ぶ。


 珍しいことではないので、香澄は隼人に早々に答えた。


「友達ができない」


 隼人が真面目な顔をして言った。


「え、いや、日向とか相坂くんがいるじゃん」

「それはそうなんだけど……」

「ああ、私に比べたら友達が少ないってこと?」


 言い方によっては嫌味になりそうなことを、香澄は嫌味なく言った。


 そして、隼人の悩みはちょうどそれだ。


 友達ゼロ人だった頃から見れば今の隼人は大きな成長だが、隼人が夢見ていた(?)高校生活とはまだかけ離れている。


 隼人が夢見ていた高校生活は、学校では常に友達に囲まれていて、放課後は常に用事がつめつめ、そういうものだ。


「隼人くんは少ない友達と深く付き合っていく方が向いてると思う」


 香澄が自分の主張を話す。


「そうか?」

「だって隼人くん優しいじゃん。その調子で大勢を相手にしたら疲れちゃうと思う」


 香澄の褒め言葉に、隼人は少し照れる。


「……そんなことない」

「どうしてもって言うなら友達の作り方くらい教えるけど……少し考えてみて」

「わかった」


 隼人は香澄の言葉にいったん話を切り上げ、家事に集中した。

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