ごくごく自然に膝枕

 隼人が寝返りを打つ。香澄の太腿が形を変える。


 隼人の瞼がゆっくりと開いた。


「あ、隼人くんおはよう」

「香澄、おはよ」


 隼人は短く挨拶して香澄の太腿に顔を埋め――


「え」


 すぐに上を向いた。


 大きな影に隠れて香澄の顔が見えない。


「俺、なんで膝枕されてるんだっけ」

「私の胸元に思いっきり飛び込んでそのまま寝ちゃったから」


 隼人の頬はみるみる間に紅潮し、隼人はそっぽを向いた。


「ごめん」

「いいよ。私もこういうのやってみたかったし。それに、クリスマスの時隼人くんに膝枕してもらったお返し」

「ありがとう」


 「ごめん」と「ありがとう」が言える大人になりなさいという母親の教育方針に従い、香澄に謝罪し感謝する。


 香澄は優しく笑って隼人に抱き着く。


「当分は隼人くんのこと好きでいるから、安心して」


 囁いた声が優しくて、隼人は嬉しかった。

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