クリぼっち回避

明日、クリスマスイブだね

「明日、クリスマスイブだね」


 香澄は意味深にそう言った。


「それどういう意味?」


 隼人は、一緒に過ごそうという意味なのではないかと考えて、香澄に尋ねる。


「せっかくだしイルミネーションでも見に行かない?」


 香澄の提案は、隼人にとっても、そしてそれ以外のほぼすべての男子全員にとっても魅力的なものだった。


 当然、予定もない隼人がそれを断ることなんて出来ないし、断ろうとも思わない。


「行く」


 綺麗なイルミネーションを見られる場所は入場料が必要なことが多いので隼人は心の中で少し迷ったが、今月は余裕があったのですぐに請けた。


「どこで見る? 有名なところで言えば、県内の山の牧場にあったっけ」

「さすがに車を使わずにあそこまで行くのは面倒くさいと思う」


 香澄はそう言いながら手元のスマートフォンでイルミネーションが有名な牧場までの経路を調べる。


「車だと一時間くらいで行けるけど、電車を使ったら三時間かかるって」

「じゃあもうちょっと手軽な場所にしようか」

「駅の近くに、しょぼいイルミネーションがあるらしいけど、どう?」

「駅の近くなら他にも買い物する時間も取れるか……。そうしよう」


 香澄の提案に隼人が同意し、駅前のイルミネーションを見ることに決まる。


 日時、そして場所が決定し、計画が現実味を帯びるごとに、隼人と香澄はイルミネーションを見に行くのが楽しみになる。


「それに、そこならお金もかからないから」

「今月は余裕があるけど……」

「それは来月に取っとこうよ」


 どうやら隼人と香澄の方向性は少し違うらしかった。

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