二人模様

 隼人が自分の考えを伝え終わって香澄の顔を伺うと、彼女は満面の笑みを浮かべていた。


「私たちのことそんな風に思ってくれて、嬉しい」


 香澄が素直な気持ちを伝えると、隼人は照れる。


「いや、別に香澄たちだからってわけじゃないし」

「そう?」


 香澄が笑いながら訊くと、隼人は軽く罪悪感を抱き、正直に話す。


「まあ……香澄たちのことが一番好きだけど」

「隼人くん、可愛い」


 隼人が俯きながら訂正すると、香澄はにやけた顔で言った。


 驚いて顔を上げると、香澄は余裕の表情をしていて、それが少し癪に触って隼人はやり返しを狙う。


「香澄の方が可愛い」


 心から思っていることだからか、声のトーンが真剣みを帯びる。


 どうだ、と隼人が香澄の顔を見下ろすと、香澄は顔を真っ赤に染めて俯いていた。


 香澄が隼人の想像より照れていて、隼人は目を見開く。


「香澄?」

「だ、大丈夫。だから、一瞬だけ一人にして……」


 そう言い残すと香澄は隼人に背を向け、自分の部屋の方へそそくさと歩いて行ってしまった。


 残された隼人は一人立ち尽くす。


「俺まで恥ずかしくなってきた……」

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