香澄帰還

 春休みも終盤に差し掛かり、香澄が実家から隼人の家に戻ってきた。


「春休み中結構会ったから、久しぶりではないね」

「ああ、でも香澄がいないと寂しかったよ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん、隼人くん」


 その言葉通り、香澄は実に嬉しそうだった。


 その表情を見て、隼人も言ってよかったと思う。


「あ、あと家事大変だったでしょ」

「そりゃもう、大変だったよ」

「でも、私が出ていく前よりも家が綺麗になってる……もしかして掃除してくれた?」

「ちょっとだけね」


 隼人は隼人で、家の掃除を香澄に気づいてくれて嬉しかった。


「あ、荷物運ぶの手伝うよ」

「本当? ありがとう。今日は私が家事全部やるね」

「いやいや、全部はいいから。ゆっくりしていいよ」

「じゃあお言葉に甘えて。隼人くんと一緒に料理したいな」


 デートでのあの出来事から、二人の距離はこれまでより急激に縮まった。


 二人の間の甘い空気感に割り込む者がいない世界が、それぞれ幸せだった。

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