ふわふわしてる女の子

 隼人と香澄が服屋に入り、小物コーナーに近寄ると、そこには様々な価格帯、様々な種類の手袋も並べられていた。


「この中に欲しいのある?」


 香澄はきょろきょろと周囲を見渡し、並べられた手袋のうち一つに目が留まる。


 淡い白色をした、暖かそうなふわふわの手袋で、香澄のイメージに良く似合っている。


 隼人と香澄は、その手袋の値札を確認する。


「四千円かあ……確か、予算は三千円までだよね?」

「だいたいそのくらい」

「じゃあ、別のやつ探すしかないか……」


 香澄は軽く呟いてまた視線を彷徨わせる。が、名残惜しいのか、時々その手袋の方を振り向く。


 隼人は、そんな香澄の姿が少し気になった。


「もしかして、あれ気に入ったの?」

「うん、そうだけど……でも、もっと気に入るのが見つかるかもしれないから」


 隼人にはわからないが、その手袋は独特の良さがあったらしかった。隼人にはわからないが。


 その所為か、どれだけ探せど香澄がもっと気に入るものは無かった。しかし、隼人がせっかく手袋を買おうと言ってくれたのになにも買わずに帰るのも失礼かと思い、少し安めで防寒作用のありそうな手袋を手に取ろうとする。


「特にないなら、さっきの手袋買うか……」

「え、でも」

「大丈夫、お金は頑張って捻出する」


 とはいえどれだけ考えても隼人はお金を捻出する道が見つからず、内心焦っていたりはしたのだが。


「でも」

「もう拒否権無いから。これ欲しくないわけじゃないんでしょ?」

「そりゃ、欲しいけど」


 あたふたと慌てる香澄の反対を押し切って、隼人は淡い白色の手袋をレジまで持って行った。

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