第5話 これって魔法なのか?

 読み取り・記憶・・・突然頭の中に〔マジックポーチ・1-5×1〕と浮かぶ。

 思わず「えっ」と声が漏れてしまいハティーに変な顔をされた。

 何だ今のは・・・確か〔マジックポーチ・1-5×1〕と頭に浮かんだぞ。

 さっき、俺は何をしていた?


 ハティーがお茶の道具を片付けて、マジックポーチに仕舞うのを見ながら授かった魔法の言葉について考えていて・・・

 もう一度マジックポーチを見ながら、(読み取り・記憶・・・)と考えると〔マジックポーチ・1-5×2〕と頭に浮かんだ。


 これか!

 読み取りと記憶、なら貼付・削除何だ?


 「どうかしたのかい、フェルナン?」


 「ん・・・ハティーのマジックポーチの1-5って何かなって」


 「あら、1メートル角の大きさの物を収納出来て、時間を5倍に延ばせるって事よ。スープが一日で駄目になるのなら、5は5日日持ちするって事ね」


 「ふぅ~ん」と生返事をして興味を無くした様に装いながら考える。

 読み取りと記憶が見た物を何かと教えてくれるのか。

 それならと目にする物全てを(読み取り・記憶)(読み取り・記憶)(読み取り・記憶)と試したがマジックポーチの〔マジックポーチ・1-5×5〕としか判らなかった。


 だが別な収穫が有った。

 記憶は何だろうと考えていてマジックポーチ・マジックポーチと考えると、頭の中に〔マジックポーチ・1-5×5〕と思い浮かぶ。

 記憶とは読み取った事を記憶しておく事の様だが、5はハティーのマジックポーチを五回読み取ったので記憶が5となっている様だった。


 * * * * * * * *


 ベッドの中でじっくりと〔マジックポーチ・1-5×5〕について考え〔読み取り・記憶・貼付・削除〕とは、魔道具の付与された魔法陣?を読み取り記憶する事だと思いついた。

 なら、貼付は記憶した魔法陣を何かに貼り付けられる能力だろう。

 削除とは、貼り付けた物を消し去る事に間違いない。


 ベッドから起きだし、壁に掛かった服のポケットを見て(マジックポーチ・マジックポーチ)と考えると〔マジックポーチ・1-5×5〕と頭に浮かんだので(貼付)と思い浮かべる。

 頭の中の〔マジックポーチ・1-5×5〕が〔マジックポーチ・1-5×4〕に変わった。


 試しにナイフをポケットに入れたが、元のままのぺちゃんこのポケットだ。

 ベルト,靴,帽子,枕と入れてはたと気付いた、どうやって取り出すのか。

 ハティーはどうやってと出し入れしていたのか思い出し、ポケットの口に手を添える。

 頭の中に(ベルト,靴,帽子,枕)が思い浮かぶので、枕と考えると手に枕が当たった。


 何度も何度も出し入れをして、マジックポーチになっていることを確認してから、ポケットに手を当てて(削除・削除・・・削除)と考えると〔マジックポーチ・1-5〕が消えた。

 再度ナイフを入れてみたが、半分も入らずポケットが無様に膨らんでいる。


 連続2回マジックポーチの貼付と考えるとマジックポーチができ、3回削除を思えば消せる様だ。


 反対側のポケットを見て(マジックポーチ・マジックポーチ)と考えると〔マジックポーチ・1-5×4〕と思い浮かび(貼付)と考える。

 〔マジックポーチ・1-5×4〕が〔マジックポーチ・1-5×3〕に変わっている。

 ナイフを入れると、するりと入りポケットはぺしゃんこのままだ。


 我、魔法に開眼せり!

 読み取った魔道具を作り放題なので、稼ぎに困らなくなる・・・絶対の秘密にしなきゃ飼い殺し確定だ。


 * * * * * * * *


 興奮で中々眠れず、寝不足で朝食の席に着く。

 食事中のゼブランに挨拶をして、ふと気がついた。

 今までは気にも留めていなかったが、ゼブランの腰にもマジックポーチらしき物がある。


 マグカップのスープを飲みながらマジックポーチを見て、(読み取り)〔マジックポーチ・3-10〕・・・ん。

 読み取れるのに〔マジックポーチ・3-10〕しか頭に浮かばない、何気ない風を装い何度も(読み取り)を繰り返すが駄目だ×1とか×2が浮かんで来ない。

 ゼブランは食事を済ませてさっさと立ち上がり、食堂から出て行ってしまった。


 〔マジックポーチ・3-10〕は読み取れるのに昨日と何が違うのか必死に考えて、読み取りに続いて記憶を思っていない事に気づいた。

 食器を片付けながら料理係の腰にもマジックポーチが有るのを見て、(読み取り・記憶)と考えると〔マジックポーチ・2-60×1〕と頭に浮かぶ。

 二度ほど読み取ったところで背を向けられて終わり。


 冒険者ギルドに向かいながら、読み取った記憶を思い出す。

 〔マジックポーチ・1-5×3〕〔マジックポーチ・2-60×2〕と思い浮かぶ。

 ゼブランのマジックポーチが3-10で、ハティーのが1-5で料理係が2-60。

 周囲にこんなにマジックポーチ持ちが居たとは知らなかったが興味深い。


 ハティーのマジックポーチはランク1で、1-5と最低ランクと聞いた覚えがある。

 料理係のマジックポーチが2-60って事は、食料品の保存に使われていると思って間違いない。

 ゼブランのマジックポーチは3-10とランクが高い割には、時間遅延効果が低い説明にもなる。

 容量の多い方か時間遅延効果の高い方の、どちらがお値段が高いのかは知らないが面白い。


 * * * * * * * *


 町の出入り口でコークスさん達と合流して草原に向かうが、余りに熱いので森の境界に向かう。

 今日からハティーに替わって俺に斥候をやれと言われた。

 何時もは後ろから二番目の位置だが、斥候の位置に就くと神経を張り詰めて疲れる。


 ハティーの10~15メートル先を気配を殺して静かに歩き、周囲を探る。

 此は索敵スキルを磨くのと同時に、隠形スキルの能力アップに良い訓練になった。


 * * * * * * * *


 初めて斥候をしてから二月経つ頃には、ハティーやコークスから俺の姿が時々見えなくなると教えられた。

 一瞬でも目を離すと俺の姿が見えず、合図の腕の動きや目配せなど俺が意図的に存在を知らせないと、居場所が判らなくなると言われて斥候は再びハティーになった。

 ボルトやキルザはコークスの後ろにいるので、俺を見る必要が無くそれに気付かなかったそうだ。


 其れを聞いたキルザが面白がり、ホーンラビットやヘッジホッグに何処まで気付かれずに近づけるのかと、俺を使って遊び始めた。

 隠形スキルを利用すると5~6メートルまでは気付かれずに近づけると判ったので、ハティーの小弓を借りて狩りをする事になり、ホーンラビットやヘッジホッグ等は見つけ次第面白い様に狩れた。


 この頃になると薬草採取はキルザやボルトに任せて、俺が索敵で野獣や小動物を探して狩ることが中心になってきた。

 小弓も俺用の物をコークスが買ってくれて、ハティーのマジックポーチに預けている。


 獲物から5~6メートルの距離なら、さして弓の練習をしなくても当てられる。

 小弓に矢をつがえて忍びより、5~6メートルの距離から引き絞ると同時に矢を放つ。

 弓を引き絞ると弦の音が出るが、獲物が気付いた時には矢は放たれているので先ず外れない。


 少し距離がある場合はキルザの出番だが、ウルフ系やドッグ系の野獣になると俺はハティーの造った楯の陰で小さくなっている。

 俺は猫人族の特徴が出ているが1/2は黒龍族の血も入っていて、身長は低いが同年代に比べて力は強い方だと思う。

 而し、俺は雑用は散々やらされたが、木剣と言えども振ることも許されなかったのでこんな時は歯痒い。


 * * * * * * * *


 授けの儀から五ヶ月、マジックポーチの記憶は1-5・2-60・3-10の三種類を各10個と、ギルドの解体責任者が腰に下げていた5-30の物が10個有るがそれ以上は増えていない。

 何人かはマジックポーチやマジックバッグを持っていたが、記憶の物と変わらないので読み取るのを止めた。


 寝る前の魔力操作を続けて、今では体内に魔力を張り巡らせる事が出来る様になったが、ラノベは良い魔法の手引き書だと思う。

 魔力を纏っていると五感が鋭敏になり、動きも普段より素速くなっているのが判る。

 軽くジャンプして天井に楽に手が届くし、薪運びも楽々と運べて苦にならなくなった。


 誰にも見られずに訓練することは殆ど不可能なので、寝る前に魔力の操作と生活魔法のコントロールの練習に明け暮れた。

 その結果生活魔法は10メートル程度の範囲内なら自由に発現出来る。

 最大直径直径10センチ程度のフレイムが作れる様になり、ウォーターも10センチ程の水球を作れるがこれ以上は大きく出来なかった。


 一番役に立ちそうなのがライトの強化版で、閃光を発するのでフラッシュと命名。

 此は生活魔法にほんの僅か、細く長い魔力を込める練習をしていて気付いた。 ほんの一滴の魔力を落とす気持ちでライトと唱え、危うく失明するかと思うほどの閃光を浴びた。

 而し、扱いが尤も面倒だったのもライトだったが、指向性を持たせる事を思いつき解決した。

 ラノベでよく言われる、魔法はイメージだは本当だった。


 このライト改めフラッシュは、狩りの際に大いに役に立った。

 索敵スキルで獲物を探し、隠形スキルで近づくとフラッシュを浴びせた後で小弓で射抜く。

 ウルフ系やドッグ系の討伐時は、後方に隠れているが仲間達の横から指向性フラッシュを浴びせて目潰しの支援。

 10メートル以上離れると使えないので此が精一杯だが、結構役に立って居ると自負している。

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